警察庁は被害を軽減するとともに平穏な生活を営めるよう支援するため、法律に基づいて、犯罪被害に遭って亡くなった人の遺族や大けがをした人などに「犯罪被害者等給付金」を支給しています。
会計検査院が令和4年度までの5年間に、警視庁と16の県警が手続きに関わって支給された821件、合わせて21億4900万円余りを調べたところ、国が被害者に代わって加害者に行使できる損害賠償請求権が管理されておらず、すべて放置されていたことがわかりました。
警察庁が各警察本部から提出された書類を見るかぎり、大多数の加害者には資産も賠償の意思もないとして債権額の調査や確認を行わなかった結果、国に移った債権額の45%にあたる427件、9億5800万円余りはことし3月末までに加害者が民法上の時効を主張できる状態になっていました。
会計検査院が各地の公安委員会が支給の裁定に用いた書類などを調べたところ、このうち11%にあたる1億円余りについては加害者にある程度の資産があり、賠償請求できたと判断できる記載があったということです。
会計検査院は法律の理解が不十分で、事務処理体制が整備されていなかったなどとして警察庁に是正を求めました。
警察庁は「指摘を踏まえて経済性、効率性に配慮しながら適切に債権管理を行っていく」としています。
犯罪被害者や遺族への給付制度とは
法律に基づく犯罪被害者や遺族への給付制度は、通り魔殺人事件の被害者遺族らの運動や昭和49年の三菱重工ビル爆破事件などをきっかけに、公的な補償制度の確立を求める声が高まったことを受けて昭和56年に始まりました。
さらに平成7年の地下鉄サリン事件などの無差別殺傷事件を機に給付対象の拡大や給付基礎額の引き上げを中心とした支援拡充のための法改正が行われ、平成16年の犯罪被害者等基本法の成立などを経て、現在の制度になりました。
▽犯罪被害者の遺族への給付金と
▽犯罪によって大けがをした人などへの給付金
それに、
▽障害が残った犯罪被害者への給付金
の3種類があり、都道府県の公安委員会の裁定を経て、警察庁が支給しています。
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