新宿・歌舞伎町周辺で、売春目的の客待ち行為をする「たちんぼ」が後を絶たない。警視庁は対策会議を開き、パトロールの頻度を週1回程度に増やすなど取り締まりの強化に乗り出した。
【映像】大久保公園周辺にいる“たちんぼ”たち
ただし現状は大久保公園周辺に立つ女性は少なくとも毎日30人、多ければ60人はいると言われており、しかも外国人インフルエンサーがナイトスポットとして紹介したこともあってか、興味を持った外国人観光客まで訪れることが増えているという。警視庁は女性を福祉施設につなぐなど、社会復帰のための支援にも力を入れていくとしているが、現状はどうなのか。『ABEMA Prime』では、過去にたちんぼをしていた当事者とともに、課題と対策を考えた。
■連日30人、多い日は60人以上 求める男性はそれ以上歌舞伎町ガイド人で「裏モノJAPAN」編集部員の仙頭正教氏は、現在の大久保公園周辺の状況について、たちんぼとそれを求める男性たちがさらに増えていると答える。「街娼の女の子たちは、毎日最低でも30人ぐらい。多い時は60人とか、もっといる。そこに来る男性陣はもっと来ている」と、異様な空間を作り続けている。インバウンドによる外国人観光客については「普通に何人かのグループで、散策するように歩いていたり、本当に買いに来ている感じもある」。
たちんぼをする女性の心理については「本当に愛に飢えている子が多い。友だちのお姉ちゃんのことを名前で呼ばずにお姉ちゃんと呼んだり『歌舞伎町のママ』とか、『新宿のお父さん』だとか、そういう擬似家族を作りたがる」と、人とのつながりを求める傾向にあるという。男性側については「今、買う側に罰則がない。あまりフォーカスされないが、おじさんたちの居場所にもなっている。買う人のド真ん中は40代とか50代。言っては悪いが寂しい男性が多い。そういう人たちが集まっていてコミュニティができている。そこで女の子に寄り添って話して、少し日銭をあげるだとか、そこで自分の存在意義を求めているような人たちもいる」と、女性だけでなく男性にも行き場を失い、買春によって女性に寄り添うという歪んだ関係が生まれている。
■増えるたちんぼに“推し文化”が影響?警視庁も対策はしているが、なぜたちんぼの数は減らないのか。仙頭氏は、いくつか理由がある上で“推し文化”をあげた。「推し文化みたいものが、すごく関わっていると思っている。人にお金を使うので、お金を作らなきゃいけないと女の子たちはすごく言う。ホストクラブやメンズコンカフェだとか、メンチカ(メンズ地下アイドル)でよく使っている」。またホストクラブに関しては売り掛けが禁止になったが「あれは確かに少しは効果があるのかもしれないが、僕はあまり感じていない。歌舞伎町に300いくつのホストクラブがあるが、そのうちの半分ぐらいしか売り掛けはやめていないし、残りはやっている。その半分も結局売り掛けという制度ではない形でツケ払いの飲みをやらせている」と述べた。
またコロナ禍によって、本来なら性風俗店で働いていた女性たちが、やむを得ずたちんぼ化してもいるという。「そもそもここに立っている女の子は、少し前までは風俗店で働いていたが働けなくなった。聞いてみると、コロナによって普通の女の子たちがいっぱい入店してきたから、あぶれるような形で働けなくなった話を聞く。」と、押し出されるように、たちんぼになるケースもあるとした。
■元たちんぼ女性が辞められた理由「支援じゃなく寄り添って」実際にたちんぼをしていた経験のある、ゆきさんはどんな気持ちであの場所に立っていたのか。多くの女性がスマホなどを見ながら暗がりで立ったまま客を待ち、男性たちが近寄ってきては次々に声をかける。異様な雰囲気が漂う場所に、ゆきさんも恐怖はあった。ただ「あそこに最初立っているのはすごく怖かったけど、どんどん麻痺していって、当たり前になってしまった」という。自分の横にも同じように多くの女性が立っていたが「私は他の女の子たちは絡まなかったけど、いつもいるおぢ(男性)に声をかけられたりはあった」。体を売って手にした金はどうしたのか。「ほとんど飲み代に溶かしてしまった。ホストに行ったりして、300万円とか溶かしてしまった」と、仙頭氏があげたパターンの例と同じだ。
未成年だった15歳から21歳まで「軽いお小遣い稼ぎのノリ」でたちんぼをしていたゆきさんだが、5児のシングルマザーで虐待やいじめの被害者の支援をしてきた山田よう子さんと出会い、人生の転機を迎える。「ママ」と呼ぶ山田さんに寄り添ってもらったことで、心に変化が起きた。「ママとお話をして、ママも昔はいろいろやっていたんだけど今は立派に5人のお子さんのお母さんをやっているということで、私も立ち直れるかなと思った」。他の大人たちからはたちんぼを辞めろと言われ続けたが「ママは無理やり、辞めさせようとはしなかった」とし、「たちんぼをやっていても、25(歳)ぐらいまでしか売れないというか、お客さんがつかないと思って、手に職をつけたいと思った」と、その世界から抜け出した。
児童相談所や福祉の施設などから支援を受けられる立場でもあったが「支援とかそういうのではなく、ただ寄り添ってほしい。あそこにいる子たちは人間不信の子が多いから」という思いが、強引に辞めさせることなく、愛を持って接した山田さんによって救われた形だ。
■支援者「たちんぼをやっている子に辞めろといって辞めるわけがない」山田さんは、ゆきさんとの交わした言葉を振り返る。「たちんぼをやっている子に『辞めなさい』と言って、辞めるわけがないと思っていた。逆に辞めなくなる。だから私は彼女にそういう言葉を1回も言ったことがない。彼女が決めた結果」と述べた。何か特別なことを伝えたつもりもなく「一つ言ったのはお金の使い道。お酒を飲んで、その時の感情が高ぶったり、後に残らないものに使っていたので、自分に残るものに使えと言った。支援をしているのは、ゆきの他にもいるが、みんな共通で愛が足りない」と、満たされない心を埋めるため、大久保公園周辺へと向かっていくという。「なので、私は彼女たちに愛をあげるように、楽しい場を作ったりしている。トータルで100近くの子たちとお話をした。やってあげた子たちの笑顔が私には愛。私も助かっている」。
普通に働くよりも安易に金が手に入り、生きがいを見つけるのも難しい女性たちが、一度は様々な支援を受けて抜け出しても、また戻ってきてしまうケースも少なくない。仙頭氏も「生きがいを見つけるのは難しい。普通の人だってなかなか集中するのは難しい。だから歌舞伎町に流れてきているいろいろな人たちもなかなか見つけられずに、ああいうところで日々の刺激だけでごまかしていくような生き方をしている」と語った。それでも当事者だったゆきさんは、自分と同じ思いをする子を減らすために「自分にできることはなんだろうと考えた時に、まずは発信していくこと」と、今後への思いも語っていた。
(『ABEMA Prime』より)
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