東京・台東区内の名所をモチーフに、江戸時代の浮世絵と、同じ場所の現在の様子を撮った地元写真愛好家らの作品を同時に紹介する「浮世絵から見る上野・浅草今昔」が15~22日、浅草・雷門前の浅草文化観光センター7階で開催される。今年で創立50周年を迎えた区写真連盟が主催。地域のカメラマンたちがファインダーに切り取った時代の移ろいを楽しめる。入場無料。(鈴木里奈)

金龍山浅草寺之図 松木東江 1883(明治16)年=いずれの画像データも台東区立中央図書館提供

 連盟の会員39人がいくつかのグループに分かれ、浮世絵に描かれた区内31カ所を撮影した。松坂屋の前身だった呉服店を描いた歌川広重の「名所江戸百景 下谷広小路」(1856年)と、現在も同じ印を掲げる松坂屋上野店の様子を写真で比較できる。

戦災で焼失した五重塔に代わり、いまは東京スカイツリーが見える=台東区写真連盟提供

 浅草寺境内にある五重塔は、1945(昭和20)年に戦災で焼失するまでは観音堂の東側にあったが、1973年に西側に再建された。浅草寺を描いた松木東江の「金龍山浅草寺之図」(1883年)では東側に描かれているが、会員の写真では東側に東京スカイツリーがそびえる。

現在はハスの花でいっぱいの不忍池=台東区写真連盟提供

 歌川広重が江戸後期に描いた「江戸高名会亭尽 池之端蓬萊亭 青楼花見の休み」には、上野公園の不忍池付近で営業していた、精進料理で有名な料理茶屋が描かれた。現在の写真では、周囲に高層建築物が並ぶ池の水面をピンク色のハスの花が彩っている。

江戸高名会亭尽 池之端蓬萊亭 青楼花見の休み 歌川広重(初代) 江戸時代後期=台東区立中央図書館提供

 連盟は1974年に創立。月に1度撮影会を開催し、浅草公会堂で写真展を年1回開いてきた。創立10周年には写真集「わが町」を出版した。1990年6月の「広報たいとう」では、写真連盟の写真を使って区内の銭湯を特集。米タブロイド紙がこれを見て銭湯特集を組んだという。  6代目理事長の永田晴久さん(80)は「今の写真はデジタルできれいに撮れるのが当たり前。その上でどう自己表現するかが課題」と話す。「インバウンド(訪日客)の人たちに『台東区の見どころは浅草だけじゃない』と知ってもらい、地元の人にも『かつてこんな所があったのか』と再発見してほしい」と願う。協会では会員も募集している。問い合わせは永田さん=電090(9108)6679=へ。

前身の呉服店があった場所には、現在も松坂屋上野店が建っている=台東区写真連盟提供

名所江戸百景 下谷広小路 歌川広重(初代) 1856(安政3)年9月=台東区立中央図書館提供

来場を呼びかける永田晴久さん=台東区内で



鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。