将棋の第37期竜王戦七番勝負第1局が10月5・6の両日、東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で行われ、自身初となるタイトル戦に臨んでいる佐々木勇気八段(30)が藤井聡太竜王(名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)に117手で敗れた。シリーズ黒星発進となった佐々木八段だが、大盤解説会に集まった観客を前に「初めてのタイトル戦は、楽しかった」と挨拶。大舞台を満喫する表情がファンを魅了した。
誰よりもこの大舞台を楽しむ姿が、そこにあった。プロデビューから14年、佐々木八段がたどり着いた夢舞台。「挑戦を決めた時から2カ月ほど時間があったが、自分の感覚では1週間に感じるくらいあっという間。頭の片隅にはいつも藤井さんのことがあった」と無我夢中で開幕局を迎えた。
心を躍らせ臨んだ開幕局。後手番となった佐々木八段は、角換わりの出だしから「やってみたい形のひとつだった」という研究手順をぶつけた。相掛かりのような形へ変形した将棋は、道なき道を行く難解な中盤戦へ。互いに長考を重ねて手を探った。
「封じ手のあたりから藤井竜王に良い手を指された気がして、ずっと関心する順を指されていた。封じ手の局面は一晩考えていたが、全く考えていない手を指されて焦った」
瞬く間に溶けて消えていく持ち時間。それでも佐々木八段は、果敢な攻めを繰り出し藤井竜王に食らいつく。自然な手を重ねてリードを拡大させていく絶対王者に、ぎりぎりの勝負を仕掛けていった。最後まで激しい変化に踏み込む勇気を見せつけたが、百戦錬磨の若き王者は動じない。ずばり斬られたところで、佐々木八段は駒台に手をやり投了を告げた。
対局中には扇子で激しく扇ぐ姿や、やや焦りの表情を見せる場面もあったが、終局後には「本局は悔いの残る手はそんなになかった。結果は仕方がないので、切り替えてやっていきたい」とコメント。さらに、大盤解説会場に詰めかけたファンの前では、「これだけ多くの方々に将棋を見ていただく機会はなかったので、自分としては嬉しい限りです。途中はちょっと苦しくて、大盤解説会が始まるまで持つかなというところもありましたが、終盤は良い勝負にできたと思います。でも終盤の距離感や終盤力の差が出てしまった」と率直な思いを告げた。
さらに「言葉は正しいかわからないですけど…」と切り出すと、輝く大きな目を観客席の方へ。「初めてのタイトル戦の1局目となりましたが、『楽しかった』ので。次も頑張りたいと思います」と大きく頷き、まだまだ続く七番勝負への意気込みを語った。
棋士としてこの舞台に上がった以上、黒星発進が全く悔しくないという訳ではないだろう。しかし、この結果をも次なる戦いへの糧にしようと貪欲に楽しむ姿勢は、多くのファンを魅了した。
ABEMAの視聴者からもコメントが続々。「いい子やな」「勇気がんばれ」「勇気が好きになる」「次もがんばれよー」「ポジティブでええやん」「それは良かった」「よかった おつかれさまでした」「その意気だ勇気」「こう言う所が憎めないんよね」「勇気つぎはよろしくね!」「大きな舞台でまた強くなるんだな」と応援の声が続々と押し寄せていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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