8月、京都で開催されたICE(国際昆虫学会議)。そんな国際的な舞台で “大人の度肝を抜く研究”を発表した10歳の少年を取材した。
9月某日、神戸市。『ABEMAヒルズ』を「こんにちは!」と元気に迎えてくれた小学5年生の長井丈くん(10歳)。アゲハ蝶が好きで庭の観察が日課だという。
「アゲハは主に柑橘系を食べるので、庭にも揃えています。幼虫を眺めたり、触ったりするのが好きです」(丈くん、以下同)
現在、昆虫に関する様々な学会に所属している丈くん。彼は「アゲハの記憶の遺伝」の研究で世界を驚かせた。「アゲハの幼虫期の記憶が成虫になっても残り、その記憶が子や孫に遺伝するのかを調べました」
丈くんはアゲハ蝶の幼虫にラベンダーの匂いをかがせながら、電気ショックを与え、「この匂いを嗅ぐと嫌なことが起こる」と覚えさせた。そして成虫になってからの匂いに対する反応を調べた。すると、68%の蝶がラベンダーの匂いを嫌がり、その子や孫も同じようにその匂いを避けたという。
丈くんはこの研究を小学校4年生のときに行い、5年生になった今年8月、ICEで世界に向けて発表した。
アメリカ生まれの丈くん。スピーチは英語で行った。これまでも研究で数多くの賞を受賞し、家にはもらった賞状や盾がずらりと並ぶ。丈くんの原点は5歳の頃。
「お母さんがレモンの木を園芸用で買ってくれて、そこにアゲハが卵を産みに来ました。幼虫から蛹になるのを失敗して死んでしまい、悔しかった。(その後)1年生から無事羽化させてあげるプロジェクトを自分で始めました」
小学校1年生の時の研究「ぼくとチョウの35にちかん」。ただの観察日記からスタートしたが、5年間で観察した数は1000匹を超える。丈くんのアゲハに対する好奇心は尽きない。
「1年生の頃はアゲハの観察記録。2年生の頃は過齢幼虫という脱皮回数が多い個体の研究。3年生は幼虫期の記憶が成虫になっても残るのかを研究し、4年生で記憶が子や孫に遺伝するのかを調べました」
そんな丈くんを側で見守ってきたお母さんは「私はあまり詳しくないので、分からなかったら一緒に調べたり、専門家に聞いたりした。昆虫館の学芸員さんに教えてもらったことも。どんどんのめり込んで本格的になっていった」と語る。
丈くんには海外の大学教授に手紙を送るという行動力も。ICEでの発表もそんな助言をもとに完成させた。
アメリカ・フロリダ大学 河原章人教授も「丈くんは1世代だけでなく3世代まで続けて飼育し、蝶を交尾させている。10歳の時点でここまでやれるのは素晴らしい。すごい学者になると期待している」と丈くんの未来に太鼓判を押す。
将来の夢は生物学者。海外の大学で研究したいという。蛹から蝶へ━━。小さな昆虫博士が未来に向かって羽ばたこうとしている。
「まだできていない研究がたくさんあります。アゲハの飛行距離など『能力』についての研究。もう一つはバイオミメティクスという昆虫の知能や体の作りを人間の生活に応用して役立てる研究もしたいです」
最後に「丈くんにとって蝶はどういった存在?」と質問してみた。
「一言で言うと神様です。僕を引きつけてくれて、5年間を巻き込みました。そう思わせてくれるアゲハに本当に感謝しています」
(『ABEMAヒルズ』より)
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