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 不要になったダンボールを、大切なものに生まれ変わらせる男性がいる。その段ボールの魅力を伝える活動を取材した。

■「ダンボールピッカー」活動続けて15年

 ダンボールを見ると興奮を抑えられず笑顔になるのは、島津冬樹さん(37)。  島津さんの職業は店や市場に足を運び、ダンボールを拾い集めるダンボールピッカーだ。  都内の仕事場をのぞいてみると、ダンボールだらけ。拾い集めたかわいい柄や色鮮やかな段ボールおよそ500枚が大切にコレクションされている。 島津さん
「昔から段ボールは、リサイクルされる素材。捨てるということに対して、もったいないという気持ちがある。段ボールって、こんなおしゃれなんだ。それを何か使えるものにしたい。理屈じゃなくて感情的なところから、この活動がスタートしているんですよね」

 この日も、ダンボールを集めるために海外の商品を多く取り扱う都内のスーパーを訪れた。

島津さん
「まず、これ見たことないですよね。これ冷凍の牛ですね、オーストラリア産」
「ナチョス。色はシンプルだけど、やっぱりちょっと、この味わいがあるデザイン。結構、ひかれたりしますね」
「あ!黄色バージョン!いや、きょう初めて見たんですけど、ナチョスの段ボールたくさんありますね。これは初めてだぞ」 NATIONAL AZABU 店長 高橋史恵さん
「(Q.段ボールで色々語っていますが、お店としてどう?)私たちにとっては、普段見慣れている段ボールなので。宝物のように扱ってもらえるのが、段ボールもいいんじゃないかと」 島津さん
「その季節とか、どういう産地から来ているかみたいなことが分かるのが、結構面白いですね」 ゆるキャラが描かれた段ボール

 この日、手に入れた段ボールはエクアドル産バナナや、裏側がオレンジ色に加工されたもの、ゆるキャラが描かれたものなどおよそ20種類。とにかく、ご機嫌だ。

 島津さんは、この活動を15年間続けている。

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■ダンボールにひかれたきっかけは?

■ダンボールにひかれたきっかけは?

 日本の古紙の回収率は82.6%。そのうち段ボールはほとんどが再利用されている。

 島津さんは、集めたダンボールの個性を生かし、様々なものに生まれ変わらせている。

 それが、ダンボールを使った財布だ。もちろん紙幣と硬貨、カードの収納も可能。さらに、カバン、スマホケース、メガネケースなどまさに変幻自在なのだ。

 島津さんが、ここまでダンボールにひかれたきっかけは?

島津さん
「15年前僕が学生の時、あまりお金がなくて。財布をとりあえず家にあった段ボールで作ったというのが最初だったんですけど」

 最初は、3カ月持てばいいと思い作った段ボール財布。使い込んでいくうちに、その丈夫さに気付き、さらに段ボールのデザイン性の高さに魅力を感じていったという。

 不要な物から大切なものへ。島津さんは、ダンボールの新たな可能性を広めたいと考えている。

 そのため、月3回ほどダンボールの財布などを作るワークショップを開催している。 島津さん
「(Q.結構、みなさん悩んでいますね)段ボールを選ぶ時点で、段ボールに対して意識が変わっていく瞬間かなって感じがありますよね」  段ボールの財布を作るには、まず時間をかけて、好みの段ボールを選ぶことから始まる。  そして、表面をゆっくりとはがし、柔らかくした後、定規などを使い薄くしていく。さらに型を取ったら、折り目に合わせ丁寧に折っていく。

 作業からおよそ1時間、世界に一つだけの財布が完成した。

参加者
「ごみとして扱われるものだけど、人の手に渡って色々使われるのはいいかなと思う。何よりデザインがすごい、いいと思って。自分としては、これからも使い続けたい」 島津さん
「やっぱり段ボールって、みんな捨てるものという意識があるんですけど、こういうワークショップを通じて、段ボールってこういう使い道もあるんだって気付いてもらうというのはすごくいい」

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■これまで43カ国へ…段ボール拾いの旅

■これまで43カ国へ…段ボール拾いの旅

 そんな島津さんの活動は、日本だけではない。

島津さん
「これは、南アフリカ産のグレープフルーツなんですけど、日本語が書いてあるけど、実際印刷しているのは南アフリカで…」

 これまで43カ国に、段ボール拾いの旅に出ている島津さん。世界を回ってこそ見える、その国のダンボール事情。

 現在は44カ国目となるインドネシアで段ボールを探している島津さん。

 街で気に入ったダンボールがあると、自ら交渉。インドネシアでの段ボール拾い、その成果は?

島津さん
「大体、拾った数は20枚弱。意外と段ボールの素材が薄くて軽いので、街中に落ちている段ボールの3割くらいは箱になっていなくて破れている状態」  島津さんにとっては宝の山である一方、インドネシアは段ボールを含む古紙の回収率が50%と少なく、まだ課題も残る。  こうしたなか、ダンボールの大切さを伝えようと、海外でもワークショップを開催している。 参加者
「楽しかったよ。今まで段ボールはごみとしか見ていなかった。邪魔だと思っていたのが、こんなにかっこよく生まれ変わるなんて」

 少し見方を変えると、新しい価値が生まれる。

島津さん
「段ボールの出会いは一期一会なので、拾っていてもまだ見ぬ段ボールはたくさんあるし、多分これ(活動)は永遠に終わらない」

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■島津さんの思い描く「未来図」

■島津さんの思い描く「未来図」

 ダンボールを実用的なものに生まれ変わらせている島津さんが作ったものだ。段ボールの財布やコインケース、カードケースなど様々なものがあり、一個およそ2000円から販売している。  そんな島津さんの思い描く「未来図」。世界の段ボールをコレクションする段ボールミュージアムだという。このミュージアムにも意味があり、テーマは「どのように段ボールを後世に残すか」だそうだ。

 これまで島津さんは、段ボールの別の使い道があるということを広めるため、段ボールの財布などの展示会などを行ってきたが、段ボールミュージアムという、「誰もがいつでも段ボールに触れ合える空間を作りたい」と話していた。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年9月27日放送分より)

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