先月30日の東京・国分寺市に続き、今月1日は埼玉県所沢市で緊縛強盗事件が発生しました。この2つの事件、使われた車が同一のものだったことが分かりました。
■走って逃げる男 追う警察官
現場付近の防犯カメラには、寝静まった住宅街を警察車両が列をなして犯人を捜す姿が映っていました。そして、警察が向かった先から、逃走する容疑者とみられる男が。警察官が必死に後を追います。場面は切り替わって畑。男は走り続けていますが、追いかけていた警察官が見えません。どうにか男の姿を捉えようと明かりを照らし続けていました。1日午後10時現在も1人の男が逃走中です。
■ガラス割り侵入 粘着テープで…
1日に事件が起きたのは、埼玉県所沢市の住宅。この家には80代の夫婦が暮らしていました。午前2時過ぎ、異変に気付いた夫が「ドアをたたいている音がする」と通報。ところが、勝手口のガラスが割られ、複数の男が押し入ってきました。粘着テープで夫婦を縛り上げ、刃物のようなもので2人の腕を切りつけて、現金8万円などを奪いました。そして通報から約40分後、警察が駆けつけたところ、現場から男が出てきて走って追いかけたということです。そして100メートルほどで追いつき、現行犯逮捕しました。
現場近くの住民
「警察官が諭す感じで、でも強い口調だったので、最初けんかかと思った。娘も『わー』って声を聞いた」
強盗致傷の疑いで現行犯逮捕されたのは、住所・職業不詳の自称・海藤貴志容疑者(43)。その後、現場から数100メートルのコンビニで犯行車両が見つかりました。1台は、前橋の「わ」ナンバー。レンタカーとみられます。
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■“車が一致”同じ犯行グループか問題はもう1台の白いコンパクトカ−。実はこの車は、別の強盗致傷事件にも使われていたようです。
その事件は前日に起きたばかり。東京・国分寺市で1人暮らしをしていた60代女性が襲われました。やはり勝手口のガラスを割って侵入。この事件の凶器は刃物ではなく、ハンマーのようなものでしたが、粘着テープで縛る手口も似ています。
警察はすぐそばにあるコインパーキングを調べていました。犯行現場からは50メートルほどしか離れていません。そのコインパーキングをとらえた防犯カメラの映像には、犯行の10分ほど前に白のコンパクトカーが現れました。所沢の事件と同じ車種。どちらもフロントにメーカーエンブレムがない車です。ナンバーは「1130」。駐車場を出たのは約1時間後でした。捜査関係者は、この映像に映っていた軽ワゴンも国分寺での事件に使われたとみています。
国分寺市と所沢市は、夜中なら車で30分ほどの距離。24時間も経たないうちに、同じ犯行グループが2つの事件に関わった可能性が濃厚です。
1日に起きた、所沢の事件では現行犯逮捕した男のほかに、警察は2人の男の身柄を確保しています。事件発生から2時間後。緊急配備をかけたところ、服に血がついている不審な男がいて、職務質問をしたのがきっかけでした。
警察は1日夜、共に住所・職業不詳の、自称・佐藤聖峻容疑者(24)と、自称・和佐裕夢容疑者(28)を逮捕。2人とも事件への関与をほのめかす供述をしていて、先に逮捕された海藤容疑者は容疑を認めているということです。いずれも面識がなく、秘匿性の高いアプリを使用して連絡を取っていたとみられます。
捜査関係者によると、先月30日の国分寺、そして今月1日の所沢、2つの事件どちらも『匿名・流動型犯罪グループ』による犯行とみています。つまり、指示役が同じで、実行犯らはSNSなどを通じて闇バイトに応募した可能性があります。
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■共通点は“複数の男”が“ガラス”を…事件は先月28日・先月30日・今月1日と3件が立て続けに近い場所で起きています。3つの事件には、容疑者は複数の男ら、犯行時間は深夜で、ガラスを割って侵入と共通点があります。さらに、国分寺の事件で使われた車が、所沢の現場付近で見つかりました。
捜査関係者によると、先月28日の練馬の事件で逮捕された遠藤容疑者は「闇バイトに応募して犯行に及んだ」と供述しているということです。
■“トクリュウ”による犯行か
捜査関係者は、練馬・国分寺・所沢の3つの事件いずれも、いわゆる“トクリュウ”による犯行とみています。
“トクリュウ”というのは『匿名・流動型犯罪グループ』の意味で、SNSなどを通じて犯罪の実行役を集め、互いの素性を知らずに集合・離散を繰り返すのが特徴です。
実際に所沢の現場に足を運んだ、元埼玉県警捜査1課・佐々木成三さんに聞きました。
元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「被害に遭った住宅の勝手口には強化ガラスが使われている。割って侵入するためには時間がかかるし、大きな音も出る。その家をあえて狙うということ自体、主体性を感じない。指示されたことだけやっている“トクリュウ”の特徴」
なぜこういった犯行が繰り返されてしまうのでしょうか。
元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「犯罪組織において実行役は“究極の捨て駒”。指示役は金が欲しいため、実行役が集まれば即、実行させる。一方、実行役は集団心理や同調圧力もあり、犯罪意識がなくなる者や、グループから抜けられない者もいるのでは」
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