子どもの部活動などの移動手段として、保護者に代わって送迎役を担う「デマンドタクシー」の導入に向けた動きが群馬県で進んでいる。学校の部活動を民間事業者らに委ねる「地域移行」により、遠方での練習を余儀なくされるケースも想定される。習い事を続けられない子どもが出るのを防ごうと実証実験に着手し、評判は上々という。
3月中旬の昼過ぎ、渋川市の中学1年伊能廉さん(13)が地域の野球チームの練習を終え、タクシーに乗り込んだ。これまでは車で約15分の自宅まで、母親の安紀奈さん(38)がパート勤務の合間に送迎してきた。安紀奈さんは「時間の使い方など、生活の選択肢が広がる」とほほ笑む。
県と渋川市は3月にデマンドタクシーの実証実験を行った。部活や習い事で移動が必要な18歳未満の県民が対象で、行き先や時間を予約し、複数人での相乗りもある。1回500円で、乗り降りの際はLINE(ライン)などで保護者に通知が届く。約120人が利用し、「新たに習い事を始められた」「仕事や家事がしやすくなった」との評価があった。
同様の仕組みは横浜市や熊本市でも試行が進む。背景にあるのは国が進める部活動の地域移行で、普段通う学校以外が練習場所になるケースも想定される。熊本市の担当者は「子どものニーズに応じた移動手段の確保が重要だ」と話す。
これまでの試行では課題も浮上した。熊本市は「子どもを待ち合わせ場所まで引率する職員が足りない学校もあった」と明かす。群馬県の担当者は「予約時間にタクシーが到着できない際、利用者への連絡方法が曖昧なままだった」とし、「習い事を諦める子どもが出ないように改善を続けたい」と意気込んだ。
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