過疎化が進む「日本一広い村」で外国人観光客をガイドする女性がいる。村の大自然に惚れこみ、魅力を伝え続ける人生を取材した。
■ガイドブックにのらないような場所まで案内
東京から新幹線と車を乗り継ぐこと7時間。奈良県の最南端にあるのが“秘境”十津川村だ。人口およそ2800人。面積は、東京23区より大きく“日本一広い村”だ。コンビニやスーパーなどは、ほとんどない。しかし、豊かな自然を生かした観光地は数多く存在する。
「谷瀬の吊り橋」は長さ297メートル、高さ54メートルで、生活用の吊り橋としては日本一の長さだ。実際に歩いてみるとスリル満点。そんな十津川村を訪れる外国人観光客が今、増えている。
外国人観光客「とても楽しいね!!」
「本当にね!!」
「見てごらん、あそこ」
「人々が何かしてるわ!」
都会では体験できない大自然。これまで足を運ぶことがなかった場所にも、外国人観光客は訪れている。
十津川村で足湯に浸かったアメリカ人の夫婦は、こう話す。
アメリカ人夫婦 キャロラインさん「ワーオ、ワンダフル!!」 そんな外国人たちに、十津川村の魅力を伝えている女性が、角田華子さん(41)だ。
過疎化が進む十津川村にとって、外国人観光客は大きな存在。角田さんは、小さい頃から学んだ英語を生かし、これまで多くの外国人たちをガイドしてきた。
さらに去年11月には、カナダ人の夫と念願のカフェをオープン。村民ならではの視点で、ガイドブックにはのらないような場所まで案内しているという。そんな角田さんのカフェにやってきたのは、カナダ人のティムさんと、アメリカ人のチップさん。長年の友人だという。
3週間、滞在予定の2人。京都観光では、金閣寺や伏見稲荷大社を訪れた。そして、和歌山に向う途中、立ち寄ったのが、十津川村だった。2人に角田さんが、すすめたのが…。
角田さん「瀞峡(どろきょう)があります。船に乗って川を見ることができます」 国の特別名勝に指定されている瀞峡。神秘的なコバルトブルーに澄みわたった川や、荒々しく切り立つ断崖が、太古の自然のまま残されている大峡谷だ。 角田さん
「船が走り、カヤックにも乗れます。私のお気に入りです」 夫 タレクさん(46)
「三重、奈良、和歌山の境目でもあるんだ」 チップさん
「3つの県がまたがっている場所なんだね」
そして角田さんは、2人にこう語りかけた。
角田さん「(外国人観光客に)私はもっと日本を知ってもらいたくてここにいます。東京、京都、大阪といった大きな街ではなく、実際の日本も見てほしい。そして、地元の人々にも会ってほしい」
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■日本の集落の本当の姿を見てほしい■日本の集落の本当の姿を見てほしい
そう話し、角田さんは2人を外に連れ出した。
ティムさん「あれは何ですか?」
興味をもったのは、都会ではまず見ることのない「かかし」だった。
角田さん「ここでは観光客を歓迎するために使われています」
さらに進むと…。
角田さん「これは、お酒のためのお米(田んぼ)です。『谷瀬』というお酒をつくっています。このお米からつくられているので、この土地の名前が付けられました」
日本の集落の本当の姿を見てほしいと語る角田さん。どんな人生を歩んできたのか…?
宮城県仙台市で生まれ育ち、大学進学を機に横浜へ、その後、大学院の博士課程で研究に没頭した。 角田さん「どうにもこうにも、私が最後の論文が出せなくて。それでちょっと行き詰まっていたタイミングではありました」
そんな時、知り合いから十津川村を紹介され、5年前、初めて村を訪れた。
角田さん「1回来た時に、もうすでに正直住みたいと思ったんですよ。ここだったら、本当に自分の力が発揮できるかもと正直思って」
まさに、一目惚れだった。
十津川村に地域おこし協力隊として移住した角田さん。そして、SNSで村の魅力を発信した。その投稿を見て、村を訪れる外国人観光客も多く、角田さんがガイドをしているという。
タレクさん「(角田)華子は、とても活力のある人です。常に人々のために時間をとってくれて元気づけてくれます。私のちょっとしたヒーローです」 カフェの経営やガイドだけではない。実は、角田さんには、もう一つの顔がある。
それは、タクシードライバーだ。十津川村の住人の4割以上が、65歳以上の高齢者。住人の足として、なくてはならないものとなっているのが村営タクシーなのだ。
役場と地元のタクシー会社が連携し、片道100円で運行している。
利用者「(Q.どういうときに使われますか)お買い物と、美容院と、診療所と。便利ですよ、家の前まで来てくれるから」 角田さん
「色んなお話できたり、色んな情報を、車を運転することで得られたりというのがすごい楽しい」
過疎化が進む村に移住し、タクシードライバーや外国人へのガイドなど、角田さんは十津川村の未来を支えていた。
角田さん「ゆくゆくは、私たちも人を受け入れられる宿をやりたい。時間に追われている日本人とか多いと思うので。ここで立ち止まって、一呼吸おいて、また明日に向かって頑張るような。もしくは、そのまま十津川村に居着いてしまうような。そんなことができたらな」
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■角田さん…国際交流は「地方だからこそ、なおさら楽しい」■角田さん…国際交流は「地方だからこそ、なおさら楽しい」
角田さんが、過去に撮った写真と共に“未来図”をつくってくれた。
角田さんは「国際交流は街だけではなく地方だからこそ、なおさら楽しい。そして、その国際交流が世代を超えて、小さい子どもからおじいちゃんおばあちゃんまでできたら、みんなにとって特別な体験になり、みんなが笑顔になれる。そんな小さな幸せから、世界平和が広がっていけば良いな」と、未来につなげたい思いを語っています。角田さんは英語教育に熱心な幼稚園に通っていたそうで、幼いころから英語が身近にあったため、人種が違う人たちとの交流に抵抗はなかったといいます。そして「十津川村の子供たちにも、小さな頃から外国人と国際交流をしてほしい」と話していました。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年9月25日放送分より)
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