【専門家に聞く】能登半島地震の影響や今後の警戒点
整備計画超えるような豪雨
“急激に増水しやすい”特性
地震の影響残る河川も
避難先の災害リスク把握を
22日午前0時までの48時間に降った雨の量は、石川県輪島市で382ミリ、新潟県村上市の三面で281ミリといずれも気象庁が統計を取り始めてから最も多くなりました。石川県と山形県、新潟県では土砂災害の危険性が非常に高くなり、土砂災害警戒情報が発表されている地域があります。
また、石川県では川の氾濫が相次ぎました。能登地方の雨はいったん小康状態になっていますが、前線はこのあとも日本海から東北付近に停滞する見込みです。22日夕方にかけて台風14号から変わった温帯低気圧が、発達しながら前線上を東へ進む見込みで、能登地方をはじめ西日本から東北の広い範囲で雷を伴って非常に激しい雨が降るおそれがあります。22日夕方までの24時間に降る雨の量は、いずれも多いところで北陸では180ミリと予想されています。また、四国で250ミリ、九州北部で200ミリ、東海と近畿、中国地方で180ミリ、関東甲信と九州南部で150ミリ、東北で120ミリの雨が降る見込みです。周囲を確認しづらい夜間に、状況が急激に悪化するおそれもあります。気象庁は石川県では引き続き低い土地の浸水や川の氾濫、それに土砂災害に最大級の警戒をするよう呼びかけています。また、北陸をはじめ東北や中国地方、九州北部では非常に強い風が吹き荒れた天気となる見込みで、最新の気象情報や自治体が出す避難情報に注意し、状況が悪化する前に安全を確保するようにしてください。
記録的な大雨となった石川県では氾濫が相次ぐなど甚大な被害が起きています。詳しい状況はまだわかっていませんが、能登半島地震の影響や今後の警戒点について石川県内の河川整備に詳しい金沢大学の谷口健司教授に聞きました。
Q.石川県の河川整備の状況などを研究されてきた専門家として、今回の災害をどのように受け止めていますか。A.24時間雨量が300ミリを超えるという観測史上最大規模の大雨によって河川を整備する計画の基準を超えるような豪雨が発生していると考えています。設計以上の外力が働き、災害のリスクが高い状況が継続しているという意識を持つべきだと思います。
Q.能登地方の河川の特徴についてどのようなことが挙げられますか。A.能登地方の河川は規模が小さく、流路が短い傾向があり、地形としては丘陵のすぐそばにある集落や海へ川の水が流れているという特徴があります。このため、降った雨がすぐに下流に到達し、急激に増水しやすく、状況が悪化するスピードが早いことに警戒が必要です。雨が続くという予報が伝えられていますが、河川の水位が十分下がりきってないところで、再び大雨が降れば、より早く水位が上昇することがあります。山や崖では地盤が緩んでいて、より早い段階で災害が起きてしまうかもしれず、可能であれば早めの行動を取っていただきたいと思います。
Q.元日の能登半島地震の影響は河川にもあるのでしょうか。A.地震によって地盤が緩んだり、河川構造物が破損したりしている場所は各地で確認されています。特に、堤防や橋の土台などの河川構造物の被害は広い範囲に及んでいて、私も現地を視察して川の脇にあるコンクリートブロックが崩れたままの状態になっているのを目にすることがありました。まだ復旧されていないところもあるとみられ、そうした場所にたくさんの川の水が流れると、川岸や堤防が削られて災害のリスクが高まったり、川が道路脇を流れている場合は道路が寸断されたりするおそれもあります。たくさんの方々の努力で復旧が進んでいますが、再度被害を受けてしまわないか、懸念しています。
Q.仮設住宅で床上浸水の被害が出ているという情報もあります。今後、注意してほしいと考えている点を教えてください。A.今回やむをえず浸水のリスクのある地域に住まなければならなかった人もいるかと思います。もともと住んでいた地域のリスクは理解できていても、避難先のリスクは十分に把握できていないこともあるかもしれませんので、いま一度、自分の住んでいる場所などの災害のリスクを確認しておくことが大事になってくると思います。この状況では非常に難しいところではありますが、土砂災害警戒区域など災害リスクの高いところで過ごしている方は、状況を見極めた上で安全な場所に移ることも考えてほしいと思います。加えて、夜の時間帯は道路が浸水しているとどこに何があるかわからず、とても危険です。急に災害のリスクが高まった場合は無理な移動はせず、可能な場合は垂直避難をして安全を確保していただきたいと思います。
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