富士山を望む駿河湾に浮かぶ無人島の水族館「あわしまマリンパーク」。老朽化や資金難で一度は閉園しましたが、7月に奇跡の復活。しかし、イルカが演技を忘れてトラブル続き…果たして、見事な演技を見せられるのか!?
■「水族館30年問題」相次ぐ閉館
2021年に三重・志摩マリンランドや神奈川・油壺マリンパーク。2023年は京都の丹後魚っ知館、茨城・山方淡水魚館など、ここ数年、全国で閉館が相次いでいる水族館。一体、何が起きているのでしょうか?
100年以上の歴史があり現存する「日本最古」の水族館として知られる「魚津水族館」。現在の水族館は43年前に建てられ、国内で初めてトンネル型水槽を取り入れ、当時話題になりました。 しかし現在は、老朽化が激しくバックヤードでは、水族館は設備の多くが海水に触れるため、30年超えると寿命に向かうとされ「水族館30年問題」と言われています。 魚津水族館 学芸員 不和光大さん「この辺はかなり爆裂している。空気に触れると結露して不衛生になる。後回しになっている、本当は直したい。この辺も割れちゃって…」
■老朽化でピンチ!「人力で波を…」
こちらは「波の水槽」と書かれていますが…。 不和さん「3年ほど前に波を作る造波機が壊れて、今は波が起こらない、凪(なぎ)の水槽です」 波を起こす機械を新しく購入する資金はありません。そのため職員、自ら人力で波を起こしていました。 不和さん
「海みたい?良かった」 来園者
「面白かったね?」
「うん!」 およそ40年前に設置された水槽には亀裂があります。 不和さん
「水を入れたり出したりしているうちに、少しずつ負荷がかかって亀裂が増えてきた」
新しく取り換えるには数千万円の費用がかかるといいます。
さらに、水の循環やろ過器、照明などの電気代に加え、餌(えさ)代の高騰も経営を圧迫しているといいます。
不和さん「もう…しんどいなと」
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■閉園も再開信じ「生き物の世話を」■閉園も再開信じ「生き物の世話を」
静岡県沼津市の無人島にある「あわしまマリンパーク」も老朽化や資金難に直面、この水族館は今年2月、閉園することになりました。人気アニメの「聖地」としても知られ、多くのファンが別れを惜しみました。
来園者「魅力的な部分がたくさんで、潰れるべき園じゃない」
「またいつか再開してくれることを祈っています」 50人いたスタッフはほとんど解雇され、残務処理のために、わずかなスタッフだけが残されました。
勤続20年、妻と3人の子どもと暮らす飼育員の港谷英明さん(43)は、次のように話します。
あわしまマリンパーク 港谷さん「閉園すると聞いた時は、言われていることは分かるが、頭で理解が追い付かない」
決められた期限内に、イルカやカワウソなど、すべての生き物を他の水族館に譲渡しなければいけません。
「この子たちと別れたくない…」飼育員たちは、営業再開を信じ、生き物達の世話を続けました。
市川香月さん「この子たちにストレスを与えないように、慎重にやりました」
なかには、去年12月に入社したばかりの飼育員もいます。
篠ケ瀬和也さん(20)「本当に混乱ですよね。入ってまだ1カ月くらいだったので。実質、無職になるのが不安で」
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■「光が差した」一度閉園も…奇跡の再オープン■「光が差した」一度閉園も…奇跡の再オープン
生き物達の譲渡が開始されようとしていた今年5月下旬。突如、一筋の光が…。一人の男性が「新しい経営者になる」と手を挙げたのです。
新たな経営者となったのは、東京で放送作家として働く今村クニトさん(54)。あわしまマリンパークは、息子との思い出が詰まった大切な場所だったといいます。 今村社長「単純にあわしまのファン。息子と一緒にプライベートで20回くらいずっと来ていた場所。『誰か、この水族館を救って下さい』企画書をいろんな社長に持っていった」
徐々に今村さんの想いに賛同する企業が現れ、再開に向けた運営資金が集まりました。
港谷さん「暗闇から光が差した」
一度閉園した水族館が奇跡の復活。5カ月ぶりに再オープンした7月、待ちわびた多くのファンが駆け付けました。
伊藤裕館長「頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします」
■進む老朽化“崖っぷち水族館”
しかし再開は果たしたものの、開園から40年、施設の老朽化や資金不足は今も課題だといいます。 港谷さん「木が塩害とか経年劣化で穴が開いていたり。(資金不足で)工事ができていないのが現実」 スタッフも必要最小限のため、1人何役は当たり前。本来はイルカ・ペンギン担当の港谷さんですが、カエルの世話もすることに。 港谷さん
「毎回、担当する動物が変わる。イルカやって、ペンギンやってカエルやったら、カエルやってても『ペンギン』って言っちゃったりとか」 餌代も2割ほど高くなり、経費節約のため設備のメンテナンスや修理は業者に頼まず、スタッフ自らが行います。
62歳の中井武さんは、3年前に閉館した「京急油壷マリンパーク」の元館長でした。
中井さん「壊れて後から直すと費用が掛かる、常にメンテナンスしてあれば寿命も長くなる」
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■ピンチ次々「イルカが演技忘れ」!?■ピンチ次々「イルカが演技忘れ」!?
さらに、大きな問題がありました。実は目玉である「イルカショー」が再オープンに間に合わなかったのです。
港谷さん「ギリギリ届いてない?」 飼育員
「届いていない」 7歳のイルカ、性格は「やんちゃで気分屋」というリオくん。閉園中、トレーニングができなかったため、すっかり体がなまってしまいました。
以前は、およそ3メートルの高さにあるボールへのジャンプを楽々こなしていましたが…現在は届きません。
さらにフラフープの演技も忘れてしまい、途中で外れてしまいました。
■「流しアジ」&初挑戦「イルカプール」
一方で「新たな目玉」も作らないといけません。スタッフはアイデアを出し合います。
流れるアジをペンギン達がコミカルに奪い合う「流しそうめん」ならぬ「流しアジ」。 さらに、イルカが普段泳いでいる海水プールで、人間も一緒に泳げるというイベントも始動。たくさんの魚やイルカを間近で見ることができます。そして、イベント初日。
東京から来た人「初海水プールで、どうなることかドキドキしている母は」
「楽しみです」
果たして、魚やイルカは見えるのでしょうか?
すると、海中には水族館周辺に生息する魚やクラゲたちの姿がありました。イルカも目の前にいます。
東京から来た人「かわいくて良かった」
「水族館にいる魚が海で泳いでいてビックリしました」
イベントは大好評。新たな目玉になりそうです。
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■「演技忘れ」イルカショー復活へ挑戦■「演技忘れ」イルカショー復活へ挑戦
一方、再オープンから1カ月。イルカショーに向けたトレーニングが進んでいました。
リオくんの調子を見ながら、徐々にジャンプの高さを上げ、成功すればご褒美の魚と、ある言葉。
港谷さん「いいねリオくん、もう一回いこう」
褒めることが大切だといいます。
こうして、徐々に信頼関係を取り戻していきます。
港谷さん「毎日一緒にいると、目とか行動とかで今、こういう感情なんだなというのは何となく分かります」 本格的なショーの復活を前に、9月最初の日曜日、観客にリオくんの練習風景を特別に公開することに。しかし、日本列島に大きな被害を与えた台風10号が近付いていたのです。
本番当日。幸い、雨は落ち着き、晴れ間も見え始めますが…。
港谷さん「底の方は結構、濁っている。水中で潜っていても(イルカの視界は)ボヤけている。それで不安とかもある」
果たして、リオくんは久しぶりにお客さんの前で見事な演技を見せられるのでしょうか?
まずは、水面に浮かぶリングの回収。無事にリングを集めることができました。
続く「フラフープ」。フラフープを口先でひっ掛け、回さなくてはいけませんが、濁りで見えなかったのか、うまくいきません。
港谷さん「頑張れ!」
すると、リオくんは諦めてしまったのか、演技をやめてしまいます。
港谷さん「おいで!」
港谷さんが呼び掛け、なんとか戻ってくるリオくん。魚をあげ、タッチ。気持ちを落ち着かせます。
目玉である、難度の高いジャンプへの挑戦です。港谷さん、口先にタッチして「跳べ」の合図。
港谷さん「行っておいで!」
今度こそ成功なるか…。
リオくんの見事なハイジャンプ。大成功でした。 港谷さん「久しぶりに(お客さんの前で)やったなかでは頑張ったのかなと」
そして台風10号が過ぎ去った7日。多くの観客の声援に気を良くしてか、この日のリオくんは見事な演技を連発。苦手なフラフープも完璧でした。
観客「かわいかった」
「かっこよかった」 来年には本格的にイルカショーを復活させたいといいます。「あわしまマリンパーク」、奇跡の復活劇は始まったばかりです。 この記事の写真を見る
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