北海道立江差高等看護学院(江差町)で複数の教員からパワーハラスメントを受けた男子学生が2019年に自死した問題で、遺族が18日、パワハラと自死の間に因果関係があるとして道に約9500万円の損害賠償を求める訴訟を函館地裁に起こした。この日は男子学生の命日だった。

 この問題を巡っては、道が委嘱した第三者調査委員会が昨年3月、学生がリポートの提出期限に1分遅れたとして教員に受け取ってもらえず留年になったことなど、複数のパワハラ行為を認定し、賠償責任を負う「相当因果関係」があると結論づけた。これを受けて遺族は道の謝罪を受け入れたが、その後、道はパワハラによる精神的苦痛に対する賠償には応じるとした一方、自死に対する賠償を拒否した。

 遺族側代理人の植松直弁護士=函館市=によると、複数の教員によるパワハラ行為のほかに、歴代学院長がパワハラ行為を放置し、パワハラや自殺予防に関する対策を行っていなかったことは安全配慮義務に違反すると裁判で主張するという。設置者の道については、2012年ごろには同学院でのパワハラについて苦情が寄せられていたのに、予防などの措置をとらなかった責任があるとしている。

 学生の母親は「謝罪はパフォーマンスだけだったとの思いです。道には人が1人亡くなっている事実を受け止め責任を取っていただきたい」との談話を出した。植松弁護士は「具体的な根拠を示さず、再調査もせずにパワハラと自死との因果関係を認めない道の対応は理不尽きわまりない」と批判した。

 一方、道医務薬務課は「訴状が届き次第、内容を精査して、適切に対応したい」としている。(野田一郎)

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