自民党の有志議員による「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」、通称「女性を守る議連」が今月、公衆浴場の利用について、議員立法の法案要綱を了承した。その内容は、公衆浴場や旅館の共同浴室で、「男女は身体的な特徴により区別される」というもので、管理者には女性の安心・安全確保のため、必要な措置を取るよう努めなければならないとした。
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女湯・男湯をめぐっては近年、性別についてのトラブルが頻発している。今年7月には、名古屋市で女性風呂に女装して侵入したとして、男が現行犯逮捕され、「心は女だ」と供述しニュースになった。
こうした状況から、法整備を進めることに歓迎の声が多い一方、すでに厚生労働省が都道府県などに対して通知を出していることから、その必要性に疑問を投げかける声もある。『ABEMA Prime』では、法案の必要性について、「女性を守る議連」の発起人で共同代表の片山さつき参議院議員と考えた。
■「身体的特徴で判断を」法整備なぜ必要?
今回、女性を守る議連が了承した法律要綱では、「男女別で利用が区別される施設を、女性が安全・安心して利用できる環境の確保」「公衆浴場は男女別の利用を」「男女とは身体的な特徴により区別される」などの要素が盛り込まれている。厚労省は2023年6月、「公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて」と題する通知を出した。ここでは「公衆浴場における衛生等管理要領等」で、おおむね7歳以上の男女の混浴を禁止されていることを背景に、「男女とは、身体的な特徴をもって判断するものであり、例えば体は男性、心は女性の者が女湯に入らないようにする必要があると考えている」と示されている。
一方で、広島高裁は今年7月、「手術を受けず、戸籍上男性から女性に変更したい」とする性同一性障害と診断された当事者に対して、「継続的なホルモン療法で身体の各部の女性化が認められる」と性別変更を認めた。判決では、性別適合手術は、自分の意に反して体を傷つけられない自由に違反する疑いがあるとしている。
まず片山氏は「性同一性障害特例法において、性別変更が認められる場合には、今まで“生殖要件”と“外観要件”があったが、(昨年10月の)最高裁判決で『生殖要件は違憲だ』となった」とした上で、今回の広島高裁判決は「スペースがわかれている公衆浴場などでは、同じ性同士ならば互いに性器が見えてもいいが、そうでない場合には羞恥心や危険性がある。身体的特徴で分ける外観要件には意味があると、裁判長が明言した」として、「グッドジョブだ」と評した。 LGBT理解増進法は、LGBTなど性的少数者への理解を求め、性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現を目指すもの。第3条では「不当な差別はあってはならないとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行わなければならない」と定めている。では今回、あえて別の法律を定める理由は、どこにあるのか。片山氏は「高裁判決は、性器を取っていない人も外観上問題がないとする一方で、外観要件には意味があるとした。この司法判断が誰にもわかるように、原理原則は法律にしつつ、細部は政省令や通知に落とし込む」。議論にあたっては、LGBT関連の団体とも意見交流したが、「男女が身体的特徴で明確に区分されてきた場所で、(法制化を)ダメと言った団体はゼロだった」と語る。
性同一性障害特例法は2003年に成立した。「手術で生殖器を取った人が、戸籍上の性別を変更できるようになった。当時は違和感の強い“障害”で、医大の外科医が『合法化すべきだ』と手術ありきで制定した」と経緯を説明する。
当事者からは「手術の道を残してほしい。外科的に証明されれば、それ以上は聞かれない」との要望が寄せられた。一方で、精神科医からは「手術なしで判断する責任を、医師に負わせないで」と望まれたという。「『精神科医は心の悩みに寄り添ってしまう。なりすましの排除は無理だ』と断言された」と述べた。
■トランスジェンダー 丸井一花さん 当事者の思い
トランスジェンダーの丸井一花さんは、2016年に性別適合手術を受けて、戸籍を女性に変更したところ、女性扱いされることで気楽になったと語る。女子トイレの使用は、手術前の女性ホルモン治療を始めたころから、友だちに付き添ってもらう形で始めた。女湯への入浴は、手術後かつ見た目が女性と自己評価できた後で行った。髪の毛の長さやメイクに気をつかい、また自己防衛のため1人で入ったことはないという。丸井さんは前提として、トイレや浴場において身体的特徴で分類することは「必要だ」と考えている。「今の世間において、『性自認が女性だから』と女性風呂に入るのは絶対によくない」。しかしながら、新たな法整備には「同じ話を繰り返し、強調しているように見える」と違和感を示す。
その背景には「SNSでのトランスジェンダー女性に対する誹謗中傷が、LGBT理解増進法の議論から、段々増えていると感じる」ことがある。「法律成立で一般化されて、学校教育もできていない中で、急にジェンダーの話が出ると、かみ合わないのではないか」。
丸井さん自身は、親から「男性として生きなさい」と言われて育った。「女の子と遊んでいたら、『男の子と遊びなさい』と言われた。一人称も“僕”を使うほどに、自分に対するマイクロアグレッション(小さな攻撃)が起きた。自殺を図ったが、たまたま生きていたので、性別適合手術を受けることにした」と振り返った。
■「あなた達が守りたい女性とは誰のこと?」
片山氏が共同代表を務める「女性を守る議連」は、LGBT理解増進法の成立に慎重だった保守系議員らが設立した。共同通信によると、「性自認を主張すれば体は男でも女性トイレや女湯に入れてしまう」との懸念があり、性的被害の多くが弱い立場の女性に対してであることから、男女別の施設で女性が安心して利用できる環境の確保が必要との考え方だ。議連の名称に対して、丸井さんは「守りたい“女性”とは一体、誰を指すのか。トランス女性は入っていないのか」と問う。これに片山氏は「マイノリティーもマジョリティーも折り合いをつけた方がいい。自然科学では、性別は性自認で決まるわけではない。しかし生活において違和感を覚える人がいるから、性同一性障害特例法を定めた。最高裁判例から総理答弁まで、日本では『性別は性自認ではなく、生物学で決まる』との考え方。その上で寄り添っていくという考え方だ」と返答した。そこで改めて、丸井さんが「私は女性なのか」と問うと、片山氏は「特例法上は女性です」との認識を示した。
(『ABEMA Prime』より)
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