「日本最北の村」で、オホーツク海に面する北海道猿払村が、夏場のイチゴ栽培に力を入れている。2021年に人口減対策として新規就農を促そうと始めた事業。国内で供給が減る時期に涼しい気候を生かせる上、基幹産業の一つである酪農との相性も良いことが理由だ。村の担当者は「村のPRに生かしたい」と話す。(共同通信=星井智樹)
7月下旬、廃校となった小学校のグラウンドに立つ広さ約240平方メートルのビニールハウス2棟で、イチゴの収穫がピークを迎えていた。村によると、酸味と甘みのバランスが良く、きれいな円すい形が特徴の「北ポムム」など3品種を栽培。昨年は約800キロを収穫し、村内や近隣のスーパーで販売された。
村の人口はこの30年で約2割減少。移住策を推進してきたが、漁業や酪農は初期投資の高さや肉体労働のイメージから敬遠されがちだ。そこでビニールハウスなどを利用する施設園芸栽培にシフト。新規就農のハードルを下げるため、気温や栽培状況などのデータ蓄積にも取り組んでいる。
イチゴは通年で国産品の需要が高いが、気温が高いと実が小さく、収量が安定しないなどの問題があり、夏は輸入が頼り。農林水産省の23年の中央卸売市場調査によると、数量で見ると最多の3月は1万6千トン超に対し、最も少ない9月は38トン。価格は9月が倍近く高い。
村の昨年7月の平均気温は18.8度。夏イチゴの栽培は地理的メリットを生かせる上、酪農業者も多いことからいちごミルクなどの加工品にもつなげやすい。本州での栽培は難しいといい、仲卸業者からは期待の声が寄せられているという。
自治体事業に住民の理解は欠かせないとして、スイーツ教室や子ども向けのイチゴ狩り体験なども計画中だ。産業課の山口智代さん(36)は「先行事例を作ることで、就農先として猿払村を選んでもらえるアドバンテージになる」と期待している。
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