東京・板橋区の熊野町交差点に突如、昭和レトロな空間が出現しました。看板や懐かしいオブジェが並ぶこの異様な光景に、多くの人が足を止めました。一体、誰が何の目的で設置したのでしょうか。
■交差点に突然現れた!謎の空間
近隣住民(50代)「(以前)ここ駐車場だったと思う」 近隣住民(60代)
「バージョンアップしているの、これ」 近隣住民(70代)
「たまに見て、増えているな〜って」 去年9月時点では駐車場でしたが、12月ごろ、突然、昭和レトロな看板が現れました。その数はどんどん増え続け、現在のようになったといいます。 近隣住民(80代)
「誰が置いたのか分からないし」 近隣住民(60代)
「何のためにやっているのかな」 近隣住民も首をかしげる謎の空間。手がかりを探していると、三輪自動車の上に看板があり、「展示品販売します」と書かれています。
さらに「展示品を販売」と書かれた下には、連絡先が記載されています。電話をしてみると、どうやら設置した本人のようです。
早速、指定された場所に向かいました。“謎の空間”の製作者、練馬区に暮らす加藤正衛さん(83)の自宅には、客を迎えるためなのか、玄関に飾られていたのは、なんと60年以上前のドアマンの制服でした。 加藤さん「(Q.これは何?)伊勢丹のドアマン。昭和30年代」 部屋には、加藤さんが50年ほど前から集めた骨董(こっとう)品などが所狭しと置かれています。 加藤さん
「これはツタンカーメン。珍しいから、一生の宝にしようと思って」 さらに、30年ほど前、高知県の骨董市で購入したというカゴを見せてもらいました。 加藤さん
「これは忠臣蔵の吉良上野介義央が乗った駕籠(かご)」
コレクションは一部屋では収まりません。その数、なんと2000点以上も。それにしても、この加藤さんは一体何者?
加藤さん「(Q.職業は?)ビルのテナント業(不動産業)」 交差点の空き地も、加藤さんが所有する土地で、コレクションの一部を展示していたのです。では、なぜ交差点に? 加藤さん
「ここの交差点は交通事故が多いところ。全国1位。交通事故ゼロを目標に設置しようと」
日本損害保険協会によると、熊野町交差点は交通事故が多く、おととしには全国でワースト1位になってしまいました。コレクションを自分のためではなく、何かに活用できないかと思いついたのが、交差点に並べることでした。
近隣住民「目立つね、やっぱり。骨董品を見て、新たな気持ちで信号を見る。歩き出す」
「みんなブレーキかけるから、事故が減って良いんじゃない」
交差点に突如現れた謎の空間。それは「交通事故をなくしたい」という切なる思いから生まれていました。
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■事故を減らしたい 消えたはずのUFO型信号機■事故を減らしたい 消えたはずのUFO型信号機
一方、交差点から惜しまれつつ消えてしまうものがありました。宮城県仙台市の交差点には、1本の支柱に車用の信号機が外側に4つ、歩行者用の信号機が内側に4つ付いた、通称「UFO型信号機」があります。
「道路が狭い場所」や「地下に水道管が埋められている」などの理由で、1970年代後半から各地で設置されました。
地元の子ども「面白い形しているから、なくならないでほしい」 仙台市立長町小学校 菅原崇教頭
「長年、地域の安全、子どもたちの登下校の安全を見守ってくれたUFO型信号機なので、非常に残念な気持ちはある」
今回、老朽化を理由に撤去されたのは3基で、全国で最後のUFO型信号機と言われていました。
「これで見納めか」と思ったその時、UFO型信号機がまだ残っているとの情報が…。その謎を追跡するため、現場へ向かいました。SNSで「UFO型信号機、名古屋大須にも現存しています」と話題になっていたのは、車用と歩行者用の信号機がそれぞれ付いているUFO型信号機です。
噂の現場は、名古屋市内の繁華街からおよそ1キロ離れた大須商店街の近くでした。
名古屋在住「珍しいなと。(よそで)あまり見たことないです」
「大須の真ん中のやつですよね。ロボットみたいでカッコイイじゃないですか」
周辺には同じような交差点がいくつもありますが、信号機が設置されているのはここだけです。
初めて見た外国人は、青信号にもかかわらず、自信がないのか、周囲をキョロキョロ。最後は写真撮影をしていました。
中国から来日「歩いたら、なんかおかしいと思って」
「(中国では)見たことない。カッコいい」 近隣住民(40代)
「見たときはびっくりしましたね。真ん中を見ないと、渡れないから」
歩行者用の信号機も正面ではなく、中央に設置されているため、初めて見る人は戸惑うようです。
一方で、「便利だなと思いました。目線が一カ所で済む。よく考えられているなと思いました」という意見も聞かれました。
いったい、どういうことなのか。取材班も横断歩道を渡ってみました。実は全国初のUFO型信号機が設置された場所でした。愛知県警によると、この交差点は交通量が多い上に道が狭いため、信号機が建てられず、事故が多発したといいます。そこで誕生したのが1号機でした。
しかし、製造会社によると、2010年に老朽化によって交換されると、1号機の型は生産が終了していたため、後継機はLEDを使った通常の信号機を8つ、つなぎ合わせて作られました。まさに、新型となったUFO型信号機です。
大阪から来た小学生(7)「UFO信号機。この前も1回(見に)来た。3月くらいに。石川県にも同じようなのがあったよ。あと大阪の中本にも」
国内で消えたはずのUFO型信号機。そして、交差点に現れた昭和レトロな空間。どちらも「交通事故を減らしたい」という思いから始まったものでした。
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