政府はマイナンバーカードを活用した行政手続きのオンライン化を進めていて、おととし成立した改正道路交通法で希望者はマイナンバーカードに運転免許証の情報を記録することができることになりました。

これを受けて警察庁はマイナンバーカードと運転免許証を一体化させた「マイナ免許証」の運用を来年3月24日から開始する方針を固めました。

警察庁によりますとマイナンバーカードのICチップに▼運転免許証の番号、▼有効期限、▼免許の種類、▼眼鏡が必要などの条件、▼それに顔写真などの情報を記録する手続きをすることで、「マイナ免許証」として利用できるようになるということです。

「マイナ免許証」を取得するかどうかは選択することができ、引き続き従来の運転免許証を使うこともできます。

また海外で運転する際に従来の運転免許証が必要になるケースがあることから「マイナ免許証」と従来の運転免許証の両方を持つことも可能だということです。

「マイナ免許証」を取得することによって、これまで自治体と警察の両方で手続きが必要だった運転免許証の住所や氏名の変更手続きを自治体だけで済ますことができるほか、「優良運転者」などについては運転免許センターなどで受けていた免許更新の講習をオンラインで受けることができるということです。

また新規で免許証を取得する場合の費用は
▼「マイナ免許証」の場合は1550円と現在の2050円から値下げする一方、
▼従来の運転免許証については2350円と値上げします。
▼両方を取得する場合は2450円となります。

警察庁は13日から1か月間パブリックコメントを募集したうえで必要な政令などを改正することにしていて、今後、周知を図っていきたいとしています。

マイナ免許証 何が変わる?

来年3月24日から運用が始まる見通しの「マイナ免許証」。
いったいどういうものなのか。そして、何がどう変わるのか。
警察庁担当の社会部、安藤文音記者が解説します。

Q なぜ「マイナ免許証」を導入?

A マイナンバーカードと運転免許証の一体化は、政府がマイナンバーカードを活用した行政手続きのデジタル化を進める中で、検討が進められてきました。おととしの改正道路交通法で、希望者はマイナンバーカードに運転免許証の情報を記録できることになりました。

Q いま持っている免許証はどうなるの?

A「マイナ免許証」を取得するかどうかは選択することができます。
選択肢としては、▼マイナンバーカードと運転免許証が一体となった「マイナ免許証」を1枚持つ、▼従来の運転免許証を持つ、▼「マイナ免許証」と従来の運転免許証の2枚を持つという3つがあります。

「マイナ免許証」の制度の導入で従来の運転免許証がなくなったり、使えなくなったりするわけではなく、運転免許証を新たに取得したり、有効期限が来て免許証を更新したりする際に、自分で選択することができます。

なぜ、両方を持てる選択肢があるかというと、フランスやイタリアなど一部の国では、運転する際に日本の従来の運転免許証が必要なところがあるためだということです。

Q 「マイナ免許証」メリットは?

A 警察庁は「マイナ免許証」を取得するメリットとして、次の2点を強調しています。

一つは、住所や氏名変更の「ワンストップ化」です。
引っ越しや結婚をした場合、運転免許証の住所や氏名の変更は、これまで自治体に届け出をしてから、運転免許センターや警察署で住所や氏名の変更手続きをする必要がありました。しかし、「マイナ免許証」では、自治体に届け出をすれば、免許証の住所や氏名も書き換えることができるので、1か所で手続きを終えることができるということです。

もう一つは、免許更新の際の講習のオンライン化です。
「無事故・無違反」の「優良運転者」と、軽微な違反のみの「一般運転者」が免許の更新を行う場合、これまでは運転免許センターや警察署で、30分から1時間の講習を受ける必要がありましたが「マイナ免許証」を取得すればパソコンやスマートフォンなど、オンラインで講習を受けることができるようになるということです。この際、本人が受講しているかや、きちんと講習を受講しているかをチェックするため、画面上で受講者の顔を確認したり、講習内容について確認テストを実施したりするとしています。

ただ、オンラインで受けることができるのは講習だけで、視力検査や写真撮影、免許情報の書き換えは運転免許センターや警察署で行う必要があります。また、「違反運転者」や初回の更新ではオンライン講習を受けることはできません。

Q「マイナ免許証」にはどんな情報が?

A 手続きをすることでマイナンバーカードのICチップには▼運転免許証の番号、▼有効期限、▼普通自動車免許や二輪免許、大型免許などの免許の種類、▼オートマチック車限定や眼鏡が必要などの条件、▼それに顔写真などの情報が記録され「マイナ免許証」として利用できるようになります。

情報はICチップに記録されるのでカードの表面に、免許証の有効期限などが印字されることはありません。現在、運転免許証を持っている人は、運転免許センターやシステムが整備された警察署にマイナンバーカードと運転免許証を持って行くと、「マイナ免許証」を作ることができます。

Q 取得や更新の際の手数料は?

A 今回、「マイナ免許証」を導入するにあたって、手数料の見直しも行われることになりました。

【新規免許取得】
新しく免許を取得する場合、これまで2050円だった手数料は
▼「マイナ免許証」の場合、1550円と値下げされますが
▼従来の免許証の場合は2350円と値上げされます。
▼両方を持つ場合は2450円となります。

【免許更新時】
また免許証を更新をする場合、これまで2500円だった手数料は
▼マイナ免許証の場合、2100円と値下げされますが
▼従来の免許証の場合は2850円と値上げされ、
▼両方を持つ場合は2950円となります。

従来の免許証の場合に値上げする理由について警察庁は、従来の免許証のカードの材料費や免許証を作成する機械の費用、人件費の高騰などをあげています。

更新時にはほかにも、講習の手数料として違反や事故の有無によって500円から1350円かかっていましたが、「無事故・無違反」の「優良運転者」と軽微な違反のみの「一般運転者」はオンラインで講習を受けることができるようになり、その手数料は200円となります。

違反をした「違反運転者」はオンラインでは講習を受けることはできず、手数料も1400円に値上げされます。

一方、更新のタイミングが来てないけれども「マイナ免許証」に切り替えたいという人は講習などはありませんが、切り替えのために1500円の手数料がかかります。

Q 「マイナ免許証」紛失したら?

A 「マイナ免許証」を紛失して、免許証を再発行する場合、2つのパターンが考えられます。

一つは自治体でマイナンバーカードを再発行して、運転免許センターなどで「マイナ免許証」を再交付する手続きです。この場合、マイナンバーカードの再発行には800円、「マイナ免許証」に一体化するには1500円かかります。

もう一つは、警察で従来の免許証を再発行する手続きで、この場合は2550円の手数料がかかります。警察ではマイナンバーカードの発行は行っていないので、「マイナ免許証」を希望する場合は、自治体でマイナンバーカードを取得する必要があります。

更新時期の把握は?

Q「マイナ免許証」の表面に有効期限などが記されないとなると、どうやって更新時期を把握すればいいの?

A 警察庁は、現在、専用の読み取りアプリを開発中で、自分の「マイナ免許証」を読み取って有効期限を確認したり、更新時期が近いことをアプリで知らせたりするサービスを始める予定だとしています。また、従来どおり、更新が近づいた際には、はがきで知らせるということです。

Q 更新の手続きは?

A マイナンバーカードを更新すれば自動的に「マイナ免許証」が更新されるわけではありません。マイナンバーカードと運転免許証の有効期限はそれぞれ異なるため、それぞれで更新の手続きが必要になります。

Q 免許証を自主返納したい場合は?

A 「マイナ免許証」のみを持っている人が、運転免許証を自主返納する場合、ICチップから運転免許証の情報だけを削除する手続きを行うことで、自主返納することができます。マイナンバーカードを返納する必要はありません。運転免許センターのほか、システムが整備された警察署で手続きを行えるよう現在、準備が進められています。

「マイナ免許証」は大丈夫?

Q 「マイナ保険証」が導入された際、別の人の個人情報が紐づけられるなどミスが多発したけど、「マイナ免許証」は大丈夫なの?

A 警察庁では「マイナ免許証」を作成する際に、マイナンバーカードの写真と、免許証の写真、そして本人を見比べるなど、チェックを強化することで間違いを防ぐとしています。

また「マイナ免許証」に登録した情報は、用紙に印字されて出てくるということで、誤った情報が登録されていないか確認を徹底したいとしています。

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