今“既婚者専用”のマッチングアプリをめぐって、不倫や不貞行為を助長すると、ネットで物議を醸している。既婚者のスタッフが、大手サービスの一つ「マリーゴー(MarriedGo)」に登録してみると、条件に合った相手の写真がズラリと並んだ。
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このアプリでは「浮気(不倫)行為、援助交際、性行為を目的としたご利用は固くお断り」としているが、スマホアプリのダウンロードは不要で、ウェブ上でやりとりできるため、結婚相手にバレにくい面もある。「セカンドパートナー」も話題の時代だが、既婚者専用マッチングアプリは、ありか、なしか。『ABEMA Prime』では、マリーゴーの代表に実態を聞いた。
■国内に10社以上、利用者約80万人超 増え続ける既婚者マッチングアプリ近年、既婚者マッチングアプリ・サイトが増加している。2018年頃から既婚者向けマッチングサービスが隆盛になりつつあり、現在国内10社以上あるとみられる。利用者数は2019年が10万人程度だったが、現在は大手3社だけで約80万人(重複登録含む)になるという。※「レゾンデートル」調べ
マリーゴーを運営する「合同会社おなかのなか」代表のヤザワ氏は、かつて結婚していた経験から、既婚者用アプリを作った。「不安があっても、話し合えない結婚相手で、『自分らしく生きていけるのか』と感じた。自分は大変な思いをせず離婚できたが、そうでない人々を助けられるサービスが作れないかと思った」。
離婚する際には、周囲から「覚悟がないなら結婚しなければ良かった」と言われたが、「少子化時代に、結婚のハードルが高くていいのかと疑問を持ち、経験から一石を投じられるサービスをリリースした」と経緯を語る。
結婚8年目で、2児の父親である、ともきさんは、複数の既婚者向けマッチングアプリを利用している。きっかけは「妻の産後に性交渉がなくなった」ことだった。「ホルモンバランスの変化で、拒否反応を起こされた時もあった。たびたびトライしても拒否されると、男の自信もなくなっていく」と、当時を振り返った。
妻への罪悪感はなく、墓場まで持っていく覚悟だという。「アプリに登録してからは、付き合った人も、そういう関係になった人もいる。恋愛感情の芽生えに気づいた時もあった」とし、子どものことは考えないようにしているそうだ。
アプリの使用前後で、なにか変化はあったのか。「夫婦仲は悪くなかったが、ケンカが絶えない時期もあった。アプリで出会った人との恋愛や会話を通して、心が満たされると、妻にも優しく接することができる」。妻との離婚は「一切考えたことがない」と断言する。
■「不倫アプリ」「美人局の温床」と批判の声も既婚者マッチングアプリをめぐっては、Xで「不倫アプリじゃん?え?くそ気持ち悪い」「美人局の温床とちゃうか?」「不倫は確かに犯罪ではないが、民法上“違法”だろ」といった批判の声も出ている。
法的には、どのように位置づけられるのか。加藤・轟木法律事務所の加藤博太郎代表弁護士は「不倫=不貞行為(性交渉)は犯罪ではないが、民法上、離婚の原因となる行為と定めている」と説明する。既婚者マッチングについては、「判例はないが、アプリを使い不倫をした配偶者とともに、アプリの運営会社も不倫をほう助したとして訴えられる可能性は理論上ある」との見解を示した。
テレビ東京アナウンサーから、メディカルテック企業へ転職した福田典子氏は「既婚者マッチングアプリは、不倫を助長していると感じる」と指摘する。こうした意見に対して、ヤザワ氏は「批判は受け止めている」としながらも、「男性の半数近くに不倫経験がある。マリーゴーでも不倫・不貞行為は禁止しているが、夫婦間の悩みを抱える人の“はけ口”や逃げ道も必要ではないか」と説く。
さまざまな声が寄せられ、「不倫する人はするという意見もある」という。「マリーゴーの退会理由を聞くと、『改めてパートナーを大事にしようと思った』と答える人も結構いる。夫婦関係を見直す立ち位置にもなれていると考える」。
■新たな夫婦の形「オープンマリッジ」とは20〜59歳の既婚男女・各2000人を対象に「配偶者とセックスレス状態にありますか?」とアンケートをとると、ある43.9%、ややある24.3%、ない31.9%との回答が。「ある」と「ややある」を合わせて、68.2%がセックスレスである現状が見えてきた。※「Healmate」運営会社「レゾンデートル」調べ
従来の結婚に代わって、ヤザワ氏が提唱するのが「オープンマリッジ」だ。「夫婦で互いに合意のもと、パートナーを作って恋愛を楽しむような関係」と説明する。「不倫が不法行為とされるのは、夫婦関係を破綻させるからだ。互いに合意していれば、破綻はしない」。マリーゴーには、「結婚の価値観を少しずつ変えていく必要がある」との思いが込められている。
作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「恋愛感情は結婚後3年ほどで薄れ、性愛のない情愛のみが残ることが多い。でも特に男性は、ときめきを求め続ける。そことどう折り合いを付けるか」と語る。また、時代による価値観の変化もある。「20世紀までは、政治家が愛人を囲っても、『仕事と関係ないから』と許容されていたが、社会が大衆化し、SNSで拡散されるようになり、『潔癖でなくてはならない』と変わっていった」。
そこで広がったのが、新たな家族の形だ。「オープンマリッジやポリアモリーは本来、トランスジェンダーやLGBTとは異なるが、同等に扱うことで権利意識を持たせようとの発想があると思う。それが正しいかの議論はあるが、人間の心理とは違うところにある“潔癖さ”にとらわれている認識は必要だ」と語った。
ライターのヨッピー氏は、「こういう形が今後増えていく」と予測する。「恋愛ではなく、収入などの条件で結婚する人が増えてきている。性愛を持ち込まずに、経済的な安定や、子どもの有無で判断する家庭は増えるだろう」とも述べていた。
(『ABEMA Prime』より)
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