栃木県の野外ライブ会場が騒然となった。雷が落ちたのだ。避雷針を用意していたようだが、「しびれ」を訴える人が出た。一体、何が起きたのか。この季節に目立つのが天候の急変、特に豪雨とともに雷がとどろくケース。そんな「ゲリラ稲妻」にどう対処すればいいのか。(西田直晃)

◆栃木のライブ会場で6人が病院搬送

 落雷事故があったのは、8日に栃木県真岡(もおか)市で開かれた音楽イベント「ベリテンライブ」。主催者のエフエム栃木によると、専門学校に通う10~20代の清掃ボランティアの男女9人が足のしびれを訴えた。うち6人が病院に運ばれ、いずれも軽症でその日のうちに帰宅したという。  同社の長茂男常務は「隣の宇都宮市が『雷都(らいと)』と呼ばれるほど、この周辺では夏季の雷が多いので、事故には細心の注意を払っていた。20回の歴史で初めて。学生さんに申し訳ない」と肩を落とす。

◆20メートル「直撃免れたのは幸い」

 ライブは午前中に開演。会場には避雷針を用いた半径100メートルの保護エリアを3カ所設けていた。荒天となったため、午後4時以降の演奏を中断したものの、観客が避難を終えた午後4時20分ごろに2度の激しい落雷が発生。保護エリアの外にあり、ボランティアが待機するテントから約20メートル離れた木にこのうちの1個が直撃した。  「雷は落ちる直前、地形にもよるが、数百メートルにわたって電流を放出する。落雷地点から約20メートルなら、直撃を免れたのは幸運だった」と話すのは、近畿大の森本健志教授(大気電気学)。被害者が足のしびれを訴えたこともあり、「電流が木から地面を伝わり、人が感電した可能性がある」と解説する。  栃木県に限らず、最近は天候の急変が目立ち、関東では落雷も激増している。

◆東京で平年の3.2倍、埼玉で2.8倍

 気象情報会社「フランクリン・ジャパン」(相模原市)の調べでは、今年7~8月の関東1都6県の落雷は16万5000回に達しており、2000年以降の平均(10万5000回)の1.5倍強を記録した。

8月7日、都内で発生した雷。左は国会議事堂(木戸佑撮影)

 特に増加が顕著なのが、東京都で平均比3.2倍、埼玉県2.8倍で、担当者は「全国的には平年並みだが、関東地方だけ突出している」と説明する。連日の猛暑と暖かく湿った空気の流入が原因とみられる。  雷の数が増えていれば、その分だけ事故に遭う確率は高くなってしまう。こうした「ゲリラ稲妻」にどう対処すればいいのか。

◆「木のそばには近寄らないこと」

 森本氏は「落雷の死傷事故は直撃に限らない」と前置きし、樹木などから人に雷が飛び移る「側撃雷(そくげきらい)」が死傷例の多くを占めている点に触れ、「野外で雷鳴が聞こえたら、木などのそばには近寄らない。燃えやすいものが近くにあれば、火が移ることもあり得る。雷から身を守るのは、頑丈な建物への避難に尽き、すぐに逃げること、素早く避難を決断することが重要だ」と警鐘を鳴らす。  「特にライブ会場など、非常に多くの人が野外に集結するときには、個人レベルでの判断も重要になる。天気予報はもちろん、スマホで調べれば、現在進行形の落雷の状況を時間や場所にかかわらず取得できる。自分の身を自分で守る工夫も必要だ」 

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