イタリアの50歳、バレンティナ・ペトリッロ選手は14歳の時、目の視野が狭くなる病気にかかりました。その後、陸上の選手として活躍し、41歳でパラ陸上に転向すると男子の種目で実績を残してきました。
そして、5年前から女性ホルモンの治療を始め、女性の種目に出場するようになり去年のパラ陸上の世界選手権は200メートルと400メートルでいずれも銅メダルを獲得しました。
ペトリッロ選手は6日、パリパラリンピックの陸上女子200メートル、視覚障害のクラスに出場し、準決勝に進むと、25秒92のタイムで全体の9番目となって決勝進出はならず、初出場したパリパラリンピックの競技を終えました。
ペトリッロ選手は2日に行われた400メートルも準決勝で敗退しました。
世界パラ陸上競技連盟は男性ホルモンの一種、テストステロンの数値が基準未満であれば、トランスジェンダーの選手が女子の種目に出場できると定めています。
IPC=国際パラリンピック委員会によりますと、パラリンピックにトランスジェンダーの選手が出場するのは、2016年のリオデジャネイロ大会以来、2人目だということです。
ペトリッロ選手は「結果は思っていたものと違っていたが、みんなの応援を感じた。ここまでの道のりを支えてくれたすべての人に、本当に感謝している」と笑顔で話しました。
そして「トランスジェンダーに対する偏見や否定的な考えがつきまとっているのは間違ったことだ。男性として生まれたことが差別の理由となるべきではない。私たちはみんなと同じ権利を持つべきだ」と訴えました。
トランスジェンダーの選手の出場 国際競技団体が判断
IPC=国際パラリンピック委員会はトランスジェンダーの選手がパラリンピックに出場する際の規定を定めておらず、国際競技団体の判断に委ねています。
2016年のリオデジャネイロパラリンピックでは、陸上女子円盤投げ、視覚障害のクラスにオランダの選手がトランスジェンダーであることを公表した選手として初めて出場しました。
一方、オリンピックでは、3年前の東京大会に男性から女性へ性別適合手術を受けたトランスジェンダーの選手が出場し、初めてのトランスジェンダーのオリンピック選手として注目されました。
東京大会の後、IOC=国際オリンピック委員会は指針を発表し、国際大会に参加する際に自認する性などによって差別をせず、競技の公平性も担保するべきだと国際競技団体に求めました。
一方で、「公平性」をめぐる議論も起きています。
アメリカでは競泳の大会の女子種目にトランスジェンダーの選手が出場して優勝し、その後、国際水泳連盟は女子の種目に出場する条件として「男性の思春期を経験していないこと」を求めました。
「男女のパフォーマンスの差は思春期が始まるころから普遍的に現れる」ことなどを背景にあげています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。