仕事を特定の職種に限って働く人に対し、使用者が別の職種への配置転換を命じられるかが争われた訴訟で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、配転命令は「違法」とする初判断を示した。「適法」とした二審・大阪高裁判決を破棄し、賠償責任の有無などを検討するため同高裁に審理を差し戻した。

労働契約は労働者と使用者が同意することで成立し、労働契約法は双方が合意すれば契約で定めた労働条件を変更できるとしている。契約上で従事する職種を限った場合には、労働者が同意しなければ原則として別の職種に配置転換できない。

下級審では従事していた職種が廃止されるといった場合には例外的に、配転命令が有効になりうるとの解釈もあった。最高裁は今回、業務上の必要性などにかかわらず一律に違法になると判断し、例外を認めない姿勢を示した。

職務内容を明確に定める「ジョブ型雇用」が広がる中、企業などの人事労務の実務に影響を与える可能性がある。

原告は滋賀県の社会福祉協議会が運営する福祉施設の職員で、福祉用具を改造する技師として約18年勤務した。施設側は2019年、事前に打診することなく総務課に配転する人事異動を内示した。男性は配転命令は無効だとし、損害賠償などを求めた。

施設では福祉用具の改造業務の受注が減り、業務を廃止する方針だった一方、異動先として示した総務課は退職による欠員が生じていた。上告審ではこうした事情があった場合でも、職種限定合意があれば例外なく配転命令が違法になるのかが争われた。

男性側は労働契約で職種を限定している以上、本人の同意なく職種を変えることは許されないと訴えた。協議会側は需要が減少し技師を置く経営上の合理性はなかったなどと主張した。

二審判決は、配転命令には男性の解雇を回避する目的があったとし、総務課への異動には合理的な理由があると判断。一審・京都地裁に続いて配転は有効とし、男性側の請求を退けた。

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