宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)と運営する阪急電鉄は6日、宙組所属の俳優の女性(当時25)が昨年9月に死亡した問題を受け、俳優らの労働実態を調べていた西宮労働基準監督署(同県西宮市)から5日に是正勧告書を受け取ったと発表した。

関係者によると、業務委託契約を結ぶフリーランスの俳優を、実質的には雇用された「労働者」だったとみなし、労務管理の不備を指摘する内容という。

歌劇団と阪急電鉄は「是正勧告を重く受け止めて適切に対処し、改革に向けた取り組みを続けていく」とのコメントを出した。勧告の具体的内容は「現在確認中」として公表していない。

歌劇団では、入団1〜5年目は雇用契約、6年目以降は業務委託契約としている。関係者によると、勧告では、6年目以降でも、事実上の労働者に該当する場合があると認定。違法な時間外労働などの是正を求めたとみられる。

労基署は女性の急死以降、歌劇団に立ち入り調査し、労働法令違反の有無などの確認を進めていた。是正勧告は違反があった場合に改善を促す行政指導で、繰り返し違反が見つかったり悪質だと判断されたりすれば、書類送検することもある。

女性はフリーランスとして歌劇団と業務委託契約していた。ただ遺族側は、指示に従う立場で事実上の労働契約だと主張。死亡までの約1カ月の時間外・休日労働を推計すると、月80時間とされる「過労死ライン」を大幅に超える277時間に上ったと指摘していた。

一方、歌劇団側は昨年11月、弁護士らのチームによる調査報告書を公表。急死直近1カ月の活動では、118時間以上の時間外労働があった可能性があると認定した。木場健之理事長(当時)も「安全配慮義務を十分に果たせていなかった」と述べた。

遺族側は過重労働と上級生俳優らのパワハラを苦にした自殺だと主張し、今年3月に歌劇団と阪急電鉄が謝罪、補償することで双方が合意した。〔共同〕

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