福島県の相馬双葉漁業協同組合は今夏から、ヨコエビの食害に遭ったヒラメを売り出した。見た目が悪く、これまでは捨てられていた「未利用魚」だが、漁師は味に太鼓判を押す。漁業の神「恵比寿様」と「エビが吸う」をかけて「恵比寿ヒラメ」と命名した。(共同通信=市川南帆)
名付け親の同漁協の漁師石橋正裕さん(45)によると、固定式刺し網にかかったヒラメは身動きが取りにくくなり、ヨコエビによる食害に遭いやすい。半分以上の表皮やエラが損傷したものは売れない。漁協全体で、多い時は9割が未利用魚になった。
石橋さんは「漁師として、魚を捨てるのはもどかしく残念だった」と話す。漁師間で一部を持ち帰って食すうち、味が良いと評判になった。
えらや内臓が食べられてしまったことで、自然に血抜きされた状態になっているといい、石橋さんは「臭みがなく、個人的には、未利用魚がむしろうまい」と言う。
「漁師が食べておいしいものを売れないのはもったいない」と考え、身には損傷がないことを条件としてブランド化したのが恵比寿ヒラメだ。見た目から避けられがちだが、安価で出し、まずはフライなど加工での流通を目指す。
今後、ほかの未利用魚の活用も考えていくという。石橋さんは「漁業者はみんな未利用魚を抱えている。うまく生かせれば流通も増え、魚食普及にもつながる」と意気込んでいる。
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