「ハザードマップ」で自宅や職場のリスクを確認
台風が接近する前に停電への備えを
避難するときの注意点
土砂災害から命を守るポイント
洪水から命を守るポイント
ハザードマップで自宅や職場が「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」に入っていないか確認してください。これらの区域は土砂災害の危険性が高く、過去の災害では建物の2階にいても犠牲になったケースがあります。「土砂災害警戒情報」が発表された場合などは、近所にある鉄筋コンクリートの建物など、頑丈な建物に速やかに避難する必要があります。今のうちに避難先を決めておいてください。
ハザードマップでは、河川の氾濫などによって浸水するリスクがある場所に、浸水の深さに応じてピンクや黄色の色がついています。自宅や職場の周辺で想定されている浸水の「深さ」を確認してください。一般的に、浸水の深さが1メートルを超えると「床上浸水」が発生します。3メートルを超えると建物の1階部分が水没するレベルで、平屋の場合、屋根まで水に浸かってしまう可能性があります。5メートルを超えると、建物の2階部分も水没するレベルです。浸水の深さと、自宅の階数を比較し、自宅にとどまっても安全なのか、別の場所への避難が必要か、確認してください。
自宅が「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っているかどうかも確認してください。この区域では川が氾濫した場合、水の勢いが強く建物ごと流されるリスクがあります。実際に2020年に熊本県の球磨川で発生した水害では、家ごと流されて犠牲になった人が複数いました。戸建て住宅の場合、2階に逃げても助からない可能性があるので、この区域内に住んでいる人は近くの川の水位に注意し、自治体から「氾濫警戒情報」などが発表された場合は、川から離れた安全な高台などに避難してください。
ハザードマップでリスクが示されていなくても、安全だとは限りません。中小河川の場合、ハザードマップの整備が間に合っていない場合も多くあります。去年6月に和歌山県で大雨となった際も、ハザードマップでリスクが示されていない川で氾濫が発生し、1人が死亡、1人が行方不明になっています。また先月、山形県で大雨となった際にパトカーが流されて警察官2人が死亡したとみられる現場も、ハザードマップではリスクが示されていませんでした。自宅や職場が河川の堤防より低い場所にあったり、坂を下った場所など周辺より低いところにあったりする場合は、浸水リスクがあると考えて行動してください。
過去の災害時には自治体のホームページなどにアクセスが集中し、ハザードマップが閲覧できなくなったことがありました。念のため印刷して持っておきましょう。また国土交通省の「重ねるハザードマップ」やNHKの「全国ハザードマップ」も活用して下さい。
今回の台風は動きが遅く、影響が長引くおそれがあります。台風が接近する前に、停電への備えも進めてください。
懐中電灯やランタンをすぐ使える場所に出しておきましょう。点灯するかどうか確認し、電池式の場合は、予備の電池も用意しておきましょう。トイレなどに行くことも考えると、ヘッドライトなど両手を空けて使えるタイプも便利です。一方、停電時にろうそくを使うと火災が起きるリスクがあるので、できるだけ避けてください。
車を持っている人はガソリンを、電気自動車を持っている人はバッテリーを満タンにしておきましょう。気温の高い状態が続いているため、停電でエアコンが使えなくなると熱中症の危険が高まります。車のエンジンがかかれば車内で涼むこともできます。またスマートフォンなどを充電することもできます。
スマートフォンは、避難情報を確認したり、救助を求めたりするうえで欠かせません。今のうちにフル充電しておいてください。モバイルバッテリーなども充電しておきましょう。
自宅がオール電化の場合、停電すると料理などができなくなります。赤ちゃんがいる家庭では、ミルクを作るためのお湯をわかすことも難しくなります。カセットコンロとガスボンベを用意しておいてください。
停電が発生すると断水も起きることがあります。水が流せなくなった時のことを想定して、家のトイレに設置して使う「携帯トイレ」などを準備しておきましょう。ウエットティッシュや消毒液、消臭スプレーなど周辺グッズも用意しておくと安心です。停電すると電子マネーなどが使えなくなることもあります。ふだん電子マネーやクレジットカードを使う機会が多い人は、手元に現金を用意しておくことも必要です。
避難するときの注意点です。避難中に災害に巻き込まれるケースはあとを絶ちません。行動を始める前に周囲の様子をよく確認しすでに道路が冠水しているような場合は、外を移動して避難するのはかえって危険です。冠水する前の、早めの避難が何よりも大切です。
歩いて避難する場合は、ズボンをはくなど動きやすい服装を心がけてください。長靴は中に水が入ってしまうと歩きにくいので、履き慣れたスニーカーがよいです。脱げやすいサンダルも避けてください。荷物はリュックに入れて、なるべく両手を空けておきましょう。雨具は傘よりカッパなど身に着けるタイプが安全です。
道路が水におおわれて、冠水している場所は避けて避難してください。水深が膝より浅くても川や用水路が氾濫すると、水に勢いがあるため足元をすくわれて簡単に流されます。冠水している場所は水が濁っていると足元の確認が困難でマンホールの蓋が開いていたり、用水路や側溝があったりしても気がづかずに転落するおそれがあります。やむを得ず冠水した場所を通る時は、傘や杖などで足元を確認しながら慎重に進むようにしてください。
車での移動も安全ではありません。2019年の東日本台風では、屋外で死亡した人のうちおよそ4割が車での移動中に被害に遭っていました。先月の山形県の大雨でも救助に向かう途中のパトカーが流され警察官2人が亡くなりました。川や用水路が氾濫し勢いがある水が流れてくると車でも簡単に流されます。冠水している場所には進入せず、う回することを考えてください。また過去の災害では氾濫した川や用水路と道路の境界線がわからなくなったり、氾濫した水で道路が削られたり陥没したりしているのに気づかず、車ごと転落して犠牲になるケースも相次いでいます。ふだん使う道路も大きく姿を変えている可能性があるので、危険がないか慎重に確認してください。
土砂災害から命を守るポイントです。土砂災害は発生してからでは逃げられません。情報を活用して、危険な場所から早めに離れることが最も大切です。
土砂災害が発生した場合に命の危険がある場所は、自治体が「土砂災害警戒区域」に指定しています。2018年の西日本豪雨では土砂災害による死者が出た場所のおよそ9割が「土砂災害警戒区域」など、あらかじめ危険性が指摘されている場所でした。崖や斜面から比較的離れていて安全だと感じる場所でも「土砂災害警戒区域」に指定されていることがあるので、ハザードマップで必ず確認してください。
土砂災害の危険性が非常に高まると、気象台と都道府県が共同で「土砂災害警戒情報」を発表します。エリアメールやアプリのプッシュ通知、テレビのテロップなどを見逃さないようにしてください。この情報が出た場合、「土砂災害警戒区域」に住んでいる人は速やかに安全な高台などに避難してください。すでに周囲の道路が冠水したり周辺が見渡せないほど雨が降っていたりして外を移動するのが難しい場合は、自宅の2階以上、かつ崖や斜面とは反対の部屋に避難する「垂直避難」で少しでも助かる確率を上げてください。ただ過去の災害では2階にいても犠牲になった人がいるので、絶対に安全とは言えません。夜間でもすぐ近くに鉄筋コンクリートの建物があれば、そこへの避難を検討してください。
土砂災害は事前に「土砂災害警戒情報」が出ていなくても、突然発生することもあります。住宅のすぐ裏などに崖や斜面があって、斜面に亀裂が入る、斜面からボロボロと小石が落ちてくる、斜面から急に水が噴き出す、土臭いにおいがするなどのいつもと異なる現象があった場合は、土砂災害が迫っている「前兆」の可能性があります。時間的な猶予はないので、即、避難してください。ただし前兆現象を確かめるために崖や斜面に近づくのはやめてください。過去の災害では状況を確認しにいって土砂災害に巻き込まれたケースもあります。
洪水から命を守るポイントです。近くの川の特徴をおさえて、避難するタイミングをしっかり決めておくことが大切です。
川の様子を見に行くのは、危険なので絶対にやめてください。川の状況は気象庁のホームページにある「キキクル」、国土交通省のサイト「川の防災情報」、NHKのニュース防災アプリなどで確認することができます。いずれの場合も川の色が「紫色」で表示されている場所は、氾濫の危険性が高い状態です。川から離れた高台など安全な場所に避難が必要です。気象庁の「キキクル」は中小の河川の多くを掲載し、国土交通省の「川の防災情報」やNHKのニュース防災アプリでは、水位計のデータや河川カメラの映像を確認することができます。
一級河川などの大きな川で氾濫の危険性が高まった場合は、管理する国などから「氾濫危険情報」が発表されます。アプリのプッシュ通知やテレビのテロップなどでこの情報を確認した際には、自治体からの避難情報に注意し早めに避難することが重要です。大きな川が氾濫すると大量の水が一気に流れ出し、広い範囲が長期間浸水するおそれがあります。2022年の豪雨では熊本県を流れる「球磨川」が氾濫して広い範囲が浸水し、多くの犠牲者が出たほか、鉄道橋など多くの橋が流されました。
川幅の狭い中小の河川は、短い間に一気に水位が上がるのが特徴です。気象庁の「キキクル」などで氾濫の危険があることを示す紫色が出た場合には、自治体からの避難情報に注意し早めに避難することが重要です。特に川底がコンクリートにおおわれていることも多い都市部の河川は水位の上がり方が急激で、2008年には神戸市を流れる都賀川で水位が10分間で1メートル30センチも上昇し遊びに来ていた小学生や保育園児など5人が流されて死亡しました。
仮に雨が弱まったり止んだりしても、大きい川には周辺の中小河川から大量の水が流れ込むため、時間差で水位が上昇することがあります。2019年の台風19号では福島県などを流れる阿武隈川で特別警報の解除から9時間20分後、埼玉県を流れる都幾川と越辺川では8時間20分後に氾濫が発生しています。自治体から避難情報が出ている間は安全な場所での避難を続けてください。
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