『熟年離婚』の割合が、過去最高になりました。 なぜ長年連れ添った夫婦が、熟年離婚を決断するのでしょうか。
■熟年離婚の割合 統計開始以来 過去最高に
熟年離婚とは、20年以上同居した夫婦が離婚することです。
いま、熟年離婚の割合は増えてきています。2022年には約23.5%と、1947年に統計を開始して以降、過去最高となりました。離婚した夫婦のうち、4組に1組が熟年離婚です。
夫婦問題研究家の岡野あつこさんによると、「熟年離婚の相談は、女性からが7〜8割」だということです。 次のページは ■実録 結婚24年、妻から突然の『離婚宣言』
■実録 結婚24年、妻から突然の『離婚宣言』
20年以上同居した夫婦の離婚『熟年離婚』が増えています。 実際のケースを見ていきます。
Aさんは51歳の会社員。婚姻歴は24年。
Aさんは仕事人間で、休日も家族や夫婦で外出した記憶はほぼありません。
妻は一つ年上の52歳。長年、地元のカフェで働いていました。一人息子はすでに独立し、夫婦2人の生活でした。
「だいたい、あなたともうこれ以上、暮らしていくなんて無理だから!」
と、妻の態度が豹変。Aさんに対して激高したといいます。
そして突然、 「これまで私に無関心で、家庭を顧みない言動に我慢してきたけれど、もう限界」「残りの人生は自分らしく生きたいので、離婚してもらいます」
と離婚を宣言して、付箋の付いた数年分の日記をAさんに手渡しました。
その日記には、●カフェ経営について夫にアドバイスを求めたら、「できるわけがない」とバカにされた
●夫に「どうせ潰れるんだから、やめておけば?」と鼻で笑われた
と、妻にとって長年の夢であるカフェ経営を、Aさんに否定されてきたことへの不満が書かれていたのです。 日記を読んで焦ったAさんは、
「そんなどうでもいいことに、いつまでもこだわっていないで、メシにしようぜ」と平静を装ったそうです。
しかし、妻は、
「私にとっては大切なことばかりだけど、あなたには、どうでも良いことだったわけね。よく分かったわ」と、後日、家を出てきました。
現在は、離婚裁判中だということです。
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姑の介護の末、熟年離婚を考えた人もいます。
Bさんは、60代の女性。 婚姻歴35年です。 夫は70代で公務員を定年退職、子ども2人はどちらも独立しています。
Bさんは、姑の介護を8年続けました。夫は、介護に協力することはなく、ゴルフや釣りなど 趣味を楽しんでいたということです。 Bさんは次第に、
「このまま夫と一緒にいると、姑のあとは、夫の介護が待っている。それだけは嫌」と考えるようになりました。
そして、自分が生きている意味が分からなくなり、夫の呪縛から解き放たれたいと思うように。
姑が亡くなり、四十九日の法要の日に、Bさんは、離婚を切り出しました。夫は冗談だと思ったようで、取り合わなかったということです。 そこで、Bさんが記入済みの離婚届を渡すと、夫は怒って、離婚届を破り捨てました。 ただ、Bさんは破られることを見越して、離婚届を3枚用意していたそうです。
夫は「お前の意志はわかった」ということで、離婚に至りました。 次のページは ■実録 夫が原因?原因不明の体調不良「夫源病」
■実録 夫が原因?原因不明の体調不良「夫源病」
Cさんは、60代の専業主婦です。 夫は60代の自営業、娘は30代で一人暮らしです。
夫が近所で度々トラブルを起こし、その度にCさんは、近所に謝罪に回っていました。 Cさんは、これまで夫と一緒にいると、原因不明の胃の痛み・頭痛・血圧の上昇・めまいなどに悩まされてきたということです。これが『夫が根源の病』と書いて、『夫源病(ふげんびょう)』と呼ばれています。
Cさんは、夫と離れ、娘のマンションに行くと症状が改善するということです。Cさんは、現在、離婚の準備を進めています。 次のページは ■熟年離婚の割合、なぜ増加?■熟年離婚の割合、なぜ増加?
『熟年離婚』が増えている背景です。1つ目は、女性の社会進出が進んだことで、離婚後のお金の心配が減ったことです。
女性の労働力人口(働く能力・意思のある女性の人口)は、2013年から2023年の10年で、約315万人増えています。
女性の年齢別労働力率(働く能力・意思のある女性の割合)です。こちらも2013年と2023年を比べると、全ての年齢層で増えています。 Dさんは、50代の専業主婦です。夫の浮気に悩まされていました。 過去には、夫の浮気相手が、家を訪ねてきたこともあったということです。 Dさんは、将来に不安をもち、家具屋さんで、パートタイムの販売員として働き始めました。 働き始めると、全国トップの営業成績を残し、正社員に昇格しました。 現在は、全国を飛び回り、若手社員の教育担当をしています。
Dさんは経済面でも、将来の不安がなくなったので、現在、離婚を申し出ているということです。 『熟年離婚』が増えている背景2つ目は、離婚時の年金分割制度の浸透です。
夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、これまでは、夫は基礎年金に加え、厚生年金ですが、妻は基礎年金のみでした。
しかし、2008年からは、専業主婦を対象にした『年金分割制度』が設けられ、離婚の際に、夫が納付してきた厚生年金保険料の記録を分割することができるようになりました。
妻にも50%の厚生年金がもらえ、夫の厚生年金は減額になります。
「離婚を考える際、昔は別れた後のお金の心配がネックだったが、女性の社会進出に伴い、自力で生きていける女性が増えた。また、制度の後押しもあり、専業主婦でもお金の心配が減った」 『熟年離婚』が増えた背景3つ目は、『日本人の長寿化』です。日本人の平均寿命は、2023年で、男性が81.09歳、女性が87.14歳です。 定年後に夫婦で過ごす時間が増えています。
「夫婦の時間が長くなった結果、『あと何十年も我慢するのか』と一緒にいることが耐えられず、夫婦関係をリセットする人が増えている」 Eさんは、65歳・専業主婦です。婚姻歴37年。夫は定年後、趣味などもないため、家でのんびりと過ごすようになりました。 しかし、次第に、Eさんの趣味の太極拳サークルなどに、常に夫がついてくるようになりました。 そして、定年1年後には、 「夕飯は必ず午後6時にしろ!」 「食器の並べ方はこうじゃない!」 などと、家事を取り仕切ったり、食事について細かく文句を言うようになったということです。 「夫の定年前は、自由な時間があったが、今は昼間もずっと一緒で文句ばかり。精神的に休めなくなった。こういう日々が続くと考えるとぞっとする」と、現在離婚協議中です。 次のページは ■熟年離婚のデメリットも…回避するには?
■熟年離婚のデメリットも…回避するには?
熟年離婚にはデメリットもあります。
デメリット1つ目は『財産分与』です。
離婚時の財産分与では、結婚後の預貯金や資産運用で得た利益などは、夫婦の共有財産として、原則2分の1が配分されます。
「さらに、離婚で裁判となれば、弁護士費用などで思いのほか出費が発生する」ということです。 デメリット2つ目は『孤独感や社会的孤立』です。
人の幸せな話を聞くと寂しく感じたり、病気になった時にすぐに頼れる人がいなくて、孤立を感じてしまうということです。
デメリット3つ目は『子どもや家族への影響』です。家族関係が複雑になることで、子どもや孫に大きな影響を与える可能性があります。
では、熟年離婚を回避するにはどうしたら良いのか。岡野さんによると、
●感謝の気持ちとねぎらいを伝える
●財産の一部を先渡しして、長年の貢献に対する誠意を見せる
ということです。
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