乱獲などで絶滅したと思われていたタンチョウが、現在の北海道鶴居村で1924年に再発見されて今年で100年となる。国の特別天然記念物に指定され、官民を挙げた保護により生息数は推定約1800羽に回復した一方、食害など地域との摩擦も目立つように。釧路市のNPO「タンチョウ保護研究グループ」の百瀬邦和代表(72)は「これからはタンチョウがいる利点を感じてもらえる活動をしなければ」と語る。(共同通信=阿部倫人)
7月10日、百瀬代表や環境省職員、ボランティアなど15人ほどが道東部の浜中町と根室市で、野生のひなに足輪を付ける「標識調査」を実施した。移動などの生態や寿命が分析できるほか、採血によって研究サンプルを得ることが可能で、1988年から続けている。
事前に寄せられた情報を基に野生のつがいとひなを見つけると、どうやってけがをさせずに捕獲し、再び親の元に返すかを検討。気付かれないように深い茂みを進んだり、湖からカヌーで近づいたりと作戦はさまざまで、この日は強い日差しの下、約8時間作業して2羽に足輪を付けた。
同NPOによると、今年は6月以降、計22羽に装着。推定生息数は過去5年、1800羽を超える状態が続いており、うち10%以上にこれまでの調査で標識を付けた計算になるという。
個体数が安定するのに伴い、食害や交通事故など人の暮らしとのあつれきが表面化。調査の際、農家に「増えすぎて作物が食べられている」とこぼされたこともあった。
「もっと経済効果を与えられるよう、工夫した見せ方を考えなければ」と百瀬さん。生態や保護の現状をまとめた5カ国語対応の冊子を製作中で、クラウドファンディングで費用を募っている。「何のための保護活動で、ゴールはどこなのか議論するきっかけにしたい」と話す。
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