子ども会とは
夏の盆踊り 運営担う保護者たち
子ども会の減少 別の要因も
新たな形で会を立ち上げた地域も
専門家「地域の事情に合わせた取り組み必要」
一度は解散…復活した地域も
都市部でもマンション単位の子ども会
夏を象徴する盆踊りが今月16日に宮崎県延岡市で行われ、およそ30人の子どもたちが楽しみました。「子どもたちに少しでも楽しんでもらえれば」と、焼きそばやかき氷の屋台の運営に汗を流していたのは、子ども会に所属する保護者たちです。子どもたちは太鼓をたたいたり、地域の大人と一緒になって踊ったりして会場は笑顔であふれました。小学3年生の女の子は「地域の人たちと一緒に盆踊りをしたのが楽しかったです。夏休みの宿題の絵日記に書きたいです」と話していました。盆踊りに参加した男性は「最高です。やはり子どもたちの笑顔って地域の皆さんを元気にしてくれるんだと改めて感じました」と話していました。
各地の子ども会は減少の一途をたどっています。今年度での解散を決断した地域を取材すると、少子化だけではなく、別の要因も見えてきました。それは保護者の負担です。愛知県豊川市の「長沢子ども会」には、今月1日時点で35人の小学生が所属し、これまで芋掘りやお楽しみ会などのイベントを開いてきました。こうしたイベントは子ども会の役員を務める保護者たちが運営を担ってきましたが、共働き世帯が増える中で、子ども会に関わる負担を訴える声が相次いで聞かれるようになってきたといいます。子ども会では規模を縮小しながら役員の数や会合の頻度を減らしたほか、簡単な連絡や情報共有はSNSで済ませるなど、保護者の負担軽減に取り組んできました。それでも地区でアンケートを実施したところ、子ども会の廃止を求める声がおよそ7割を占めたということです。また、令和3年度には地区の半分以上の子どもが加入していましたが、今年度は3割程度に落ち込み、今年度中に解散することを決めました。
全国子ども会連合会によりますと、ライフスタイルや子育ての価値観などが時代とともに変わってきているとして、保護者の負担を訴える声は全国各地で聞かれ、子ども会の減少につながる要因になっているということです。小学5年生の女の子は「なくなると聞いた時、すごくびっくりしました。楽しい行事も多かったし、地域の人とも知り合いになりなじんでいる感じがあったのでとても悲しいです」と話していました。長沢子ども会の近藤愛子会長は「子どもにとっては、多感な時期にいろいろな年代の友達と触れ合うことは心の成長に大切であるうえ、地域にとってもお互いの顔と名前を覚えることで町全体の安心感にもつながっていたので、なくなるのは残念です。代わりとなる手段を考えていきたい」と話していました。
保護者の負担という課題を解消して、新たな形で子ども会を立ち上げた地域もあります。埼玉県草加市の「草加市子ども会」は市の職員、安高昌輝さん(36)が友人などとともに2006年に立ち上げました。みずからも「子ども会で育った」という安高さんが18歳の時に市内の子ども会の状況について調べたところ、それまでの20年間で7分の1にまで激減していることを知ったといいます。長年、子ども会活動に参加し続ける中で、その存在意義を感じていたという安高さんは18歳という若さで、自身で立ち上げることを決めました。こうして生まれた「草加市子ども会」ですが、保護者の負担が課題になっている現状を踏まえて、従来にはなかった新たな形をとっています。それは市内で子ども会がない地区のすべての子どもを加入の対象にした上で、運営については中学生や高校生、それに大学生などのボランティアが担うことです。24日は翌日のお化け屋敷のイベントの準備を進めていて、若い世代の人たちが子ども会の役員として現場を取りしきっていました。
小学4年生の女の子は、「違う学校の友達と仲よくなれるのが子ども会のいいところです。自分も中学生になったら役員をやりたいと思います」と話していました。また、保護者の1人は「地域に子ども会がなくてこちらに通わせています。担い手が不足する中で、若い人たちが主体的にやってくれるのはいいと思います」と話していました。こうした取り組みが功を奏し、会を立ち上げた際、12人だった子どもの数が現在は100人を超えているということです。安高さんは、子ども会には幅広い世代の人が関わることが理想だとしたうえで、「大人ができないなら自分たちでやろうと思って立ち上げましたが、今の運営の形は学生たちの成長にもつながると思います。子ども会を通じて、『ふるさと』のような地域を感じられる原点ができれば、成長した時にも子どもたちの力になると思います」と話していました。
子ども会が減り続ける現状を専門家はどう見ているのか、話を聞きました。子ども会に詳しい日本文理大学の高見大介准教授は、「子ども会は子どもの成長にとって大切な原体験を提供できるところに大きな意味がある。人口が減少している地域では子どもたちに地域に残ってほしいという声をよく聞くが、地域に育てられた経験がある子どもたちじゃないとなかなか地域には残らない。子ども会の活動は地域力の根底にあると言っても過言ではない」と、子ども会の存在意義を指摘しています。そのうえで、「子ども会活動を存続させていくのはこれから先、さらに厳しくなってくると思う。これまでどおりの子ども会活動を続けなければならないという考えではなく、ニーズを踏まえ、地域の事情に合わせた取り組みが必要だ」と指摘しています。
一度は解散した子ども会を復活させた地域もあります。大分県別府市亀川の子ども会は、2015年に運営の担い手不足などを理由に解散しました。しかし、小学生の子どもがいる保護者を中心に、子どもどうしの交流や体験活動の機会を求める声だけではなく、地域のつながりの希薄化を懸念する声が相次いだため、おととしに子ども会が復活しました。
今月19日の早朝、地域の公園には小学生からお年寄りまで40人余りが輪になってラジオ体操をする姿がありました。このラジオ体操はもともと老人クラブだけで行っていましたが、復活した子ども会も参加するようになり、幅広い世代の人たちが交流を深めているということです。子ども会の会長を務める永尾美保さんは「私の子どもが小学校にあがった時に学校のことを相談できる人がいなかったので、地域での交流が復活できてよかったです。どうすれば持続可能なのか、模索しながら長く地域に根づいた子ども会にしていきたい」と話していました。また、地域の老人クラブで会長を務める野村幸雄さんは「私たちの目がいろいろなところで子どもたちに届いていれば、防犯の効果も期待でき、地域力の向上にもつながる。将来を担う子どもたちの育成に、ささやかながら貢献したい」と話していました。
都市部でも地域のつながりを維持しようと、マンション単位の子ども会があります。大阪市内にある「マンション子ども会」ではエレベーターホールで保護者たちが打ち合わせをしたり、集会所で行事を開いたりするなど、マンションの環境を生かした形で運営しているということです。夏祭りもマンションの敷地内で開催するため、子どもも大人も安心して楽しむことができるということです。この子ども会で会長を務める女性は、「マンションの中という安全な場所で子どもたちを自由に遊ばせられるのがメリットだと感じる。マンション子ども会は1つのコミュニティだと思う」と話していました。
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