栃木県の塩原温泉にある廃墟となったホテルはバブル期には団体客やスキー客で賑わっていたということですが、現在は廃業したホテルが転在しています。中には猿が住みついてしまっているホテルもあるということです。
■文豪たちが愛した温泉郷に現れたサル
「1200年以上の歴史を誇る」と言われる北関東有数の温泉地・塩原。周辺には雄大な渓谷美が広がり、春から夏にかけては色鮮やかな青々とした、秋には色とりどりに紅葉した木々が山を染めます。渓谷を囲むように、町には多くの温泉宿が立ち並び、150カ所以上の源泉から湧き出す、様々な種類の湯が人々を癒します。
夏目漱石や尾崎紅葉など名だたる文豪に愛された歴史ある温泉郷。しかし、今、ある異変が起こっています。 街には、営業していないホテルや旅館が点在。なかでも、温泉街の東に位置する地域には、温泉街の一角に廃業したホテルが向かい合っています。廃業してからまだ2年ほどのホテルですが、外壁には傷が目立ち、ホテルを囲う竹の柵は崩れ落ちています。 向かいのホテルは、廃業して20年あまり経つというホテル。外壁やベランダの手すりなど、至る所にツタが絡まり、月日の流れを感じさせます。 入り口付近には「大露天風呂あります」と書かれた看板が無残に横たわる姿も。 上空から見ると、人間の営みが一切なくなった廃墟ホテルの中には、フェンスの上を歩くサルの姿が見えます。地元の人によると「冬場は廃墟となったホテルがサルの寝床になっている」といいます。次のページは
■「塩原温泉」バブル崩壊後の街の変化■「塩原温泉」バブル崩壊後の街の変化
この一角を上空からドローンで見てみると、半径30メートル圏内に4つの廃業した宿泊施設が密集していました。廃墟ホテルの目の前にあるまんじゅう店・亀屋本舗の店主、渡辺聡さんは次のように話しました。 渡辺さん「お化け屋敷みたくなっちゃって、景観もよくないですしね。やらないんだったら、壊しちゃってもらいたい。本音ですね」 長年この土地で店を構える店主が、当時の様子を語ります。 渡辺さん
「昔はうちの前が芸者置屋さん。隣が駄菓子屋さん。その隣が雑貨屋さん。こっちが普通の家になっちゃいましたけど、お土産屋さん。当時は人がいっぱい歩いていて、夜なんかはお客さんがいっぱい歩いていて、うちなんかも夜10時くらいまでやっていたくらい」 1980年代からバブル期にかけて隆盛を誇った塩原温泉。街には馬車が行き交い、露天風呂には多くの人がいました。しかし、バブル崩壊後は団体客やスキー客が減少の一途をたどり、街には次第に廃業した宿泊施設が増えていったといいます。 渡辺さん
「年を追うごとに(宿泊施設が)やめていっちゃってる感じ。昔の面影がなくて、人もいなくて寂しい限りですね」
観光客も街の変化を感じています。
観光客「寂れてて、全然昔の面影がない。シャッターみたいのが多くて、人がいないじゃん。活気がない」
■廃墟となった温泉旅館に残る源泉
1951年創業、塩原温泉の中心地に位置する旅館も、5年前に廃業しました。現在は、町にある別の旅館が買い取って建物の管理をしています。許可を得て中へ入ると、廊下の天井ははがれ落ち、床は抜けてしまいそうなくらい腐食しています。
廃業した旅館を買い取った湯守田中屋 田中三郎社長「この上が屋上なので、ここら辺りひどい」
「(Q.派手に崩れ落ちてますね。腐っている)これは完全に雨ですね」
一方、客室の押し入れには座布団や布団がしまわれています。
田中社長「部屋自体はそんなに悪くないんだけど」
営業当時、多くの宿泊客に料理を提供した厨房(ちゅうぼう)には、食器や調理器具、瓶に入ったままのジュースも残されています。
塩原で長年旅館を経営し、地域の旅館組合の理事長も務める田中社長は、この旅館が廃業してすぐに買い取りに動きました。
田中社長「塩原温泉の中心なので、そこをなんとかしなければいけないっていうことで。やっぱり活気がある施設を作りたいなと思って、購入したわけなんですけど」
多くの宿泊客を癒した自慢の天然温泉も、日帰り温泉施設に作り変える計画を立てたものの、コロナ禍で見通しが立たなくなり、現在も活用方法を模索しているとのことです。
さらに奥へ行くと…。
田中社長「これがね、温泉が出てるんですよ」
「(Q.あぁ、本当だ。湯気がたって)ここは結構良い温泉なんですね。源泉」
誰もいない廃墟となった温泉旅館の片隅で、今も湧き続ける源泉がありました。
田中社長「(Q.源泉、もったいないですね。あぁ、いい香り。これは活用したいですよね?)けっこう湯量が豊富なんですよ。温度も高いですし、今は温泉掘れないですからね。この地域は。だから、貴重です。ここを生かしていきたいな」
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■高齢者向け住宅施設として再活用■高齢者向け住宅施設として再活用
廃墟ホテルが増え続けるなか、新たな活用策も。川のほとりに立つ建物は、一見すると旅館のように見えますが、看板には「有料老人ホーム」という文字が掲げられています。 ケアホテル松の家 青木隆将施設長「この旅館が廃業されて、弊社のほうがこの旅館を買い取って、高齢者さんに温泉に浸かってもらって元気になってもらおうと」 埼玉で福祉施設を運営する会社が廃業した旅館を買い取り、住宅型の高齢者施設に活用したのです。 青木施設長
「(Q.こちらフロントって書いてあります。これもそのまま?)そのままです。使わせていただいています」
館内には、旅館の面影が残されていました。
青木施設長「かけ流しの温泉になります。こちらの方の手すりをつけたり、ひじ掛けがあるシャワーチェアを使っています」
温泉はそのまま残しつつ、バリアフリーに改装されています。
青木施設長「高齢者さんは温泉が好きなので、県外の方も沢山の方が問い合わせをして、半分は県外の人が入居されている。足が痛かったり、ひざが痛かったり、腰が痛かったりして。ここに来て良くなったとか、介護度が下がったとか。そういうようなことがかなりあります」
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■温泉むすめの聖地「塩原八弥ちゃん」■温泉むすめの聖地「塩原八弥ちゃん」
さらに観光地の盛り上げに向け、こんな取り組みもあります。 塩原温泉観光協会 企画宣伝委員長 杉山岳人さん「こちらはですね、温泉むすめ・塩原八弥(やや)ちゃんのはっぴになります。お泊りになった方しか買えない貴重なはっぴです」 温泉を擬人化したキャラクター「温泉むすめ」の塩原八弥ちゃん。このキャラクターを塩原温泉の観光大使として活用し、旅館や店が独自のグッズを作成しています。
街中には至る所に温泉むすめの姿が。このPRをきっかけに、「20代から30代の若い宿泊客が増えた」といいます。
「SUZUの森cafe」では、店の一角を温泉むすめのコーナーにしたところ、“温泉むすめの聖地”として知られるようになり、全国から人が来るようになったといいます。
温泉むすめファン「塩原温泉に関しては、八弥ちゃんのいる所がいっぱいあるので、温泉ももちろん寄りつつ、その温泉地の居酒屋さんだったり、こういうカフェだったり、いろんな所へ行くきっかけになるので、温泉地を知るきっかけになった」
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■地方への外国人富裕層誘致 モデル地域に選出■地方への外国人富裕層誘致 モデル地域に選出
東京から塩原温泉に行くには、東京駅から那須塩原駅まで東北新幹線でおよそ75分、さらにそこからバスで65分、合わせて2時間20分ほどかかります。 塩原地区の年間宿泊者数は1991年にはおよそ146万人でしたが、年々減少し、コロナ前の2019年にはおよそ半分の74万人になりました。 全国的にインバウンドが増加していますが、外国人宿泊者数の割合は全国の19.4%に対し、塩原地区はわずか0.8%にとどまっています。この理由を、那須塩原市産業観光部の担当者は「インバウンド客は那須塩原駅を利用してくる人がほとんどだが、駅から塩原温泉までの交通の便があまり良くないことが一因」としています。
こうしたなか、那須及び周辺地域エリアは去年3月、観光庁が指定する外国人富裕層を地方に呼び込むためのモデル地域に選出されました。市の担当者は「那須エリアならではの自然風景や地域独自の文化・食・田舎を味わうことができる体験型ツアーでインバウンド客にアピールしていきたい」と述べました。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年4月24日放送分より)
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