大阪府の咲州庁舎に入居するホテルが賃料を支払わずに営業を続けている問題。

26億円の支払いと立ち退きを命じられている会社の社長が22日、資産隠しの疑いで逮捕されました。事件の背景に迫りました。

■咲州庁舎に入居するホテルの社長が逮捕 資産差し押さえを免れるため別会社の口座に隠した疑い

【誉田喜博容疑者(2018年12月)】「何とかここをホテルにしたいというつもりで図面から起こし、入札公募に参加させてもらいました。これからこの庁舎を活気よく、人を呼べるように頑張っていきたいと思います」

ホテルのオープンを前に大勢の前でスピーチする男。22日、「強制執行妨害目的財産損壊等」の疑いで逮捕されました。

さきしまコスモタワーホテル開発の社長・誉田喜博(こんだきはく)容疑者(62)ら2人は去年8月と9月、ホテルの資産が差し押さえられるのを免れるため、およそ910万円を別会社の口座に隠した疑いが持たれています。

■開業から10カ月後には賃料未納 現在も支払わず営業を継続

そもそもなぜ資産を差し押さえられるような事態に至ったのか。

ことの発端は6年前にさかのぼります。

2019年1月に華々しくオープンした「さきしまコスモタワーホテル」は、もともと大阪府咲州庁舎だった場所を数億円かけて改装し、開業しました。

大阪らしい仕掛けを凝らしたホテルとして、国内だけでなく外国人観光客からも人気に。

誉田容疑者は当時、報道陣向けに開かれた内覧会で、こう話していました。

【誉田喜博容疑者(2018年12月)】「(大阪府の)庁舎の方々に色々な迷惑をかけて、色々な知恵を出してもらって、今日こうやってでき上がったのを、お披露目することができました。ありがとうございます」

ホテルが開業出来たのは、もともと庁舎として使用していた“大阪府のおかげ”と、感謝の言葉を述べる誉田容疑者。しかし、ホテルのオープンからまもなく、誉田容疑者はこの言葉とは全く逆の行動に出ます。

【記者リポート】「大阪・関西万博会場の目と鼻の先にある、『さきしまコスモタワーホテル』。賃料などを大阪府に支払わないにも関わらず、ビルに居座り営業を続けました」

咲州庁舎でホテルを運営するにあたり、誉田容疑者らは府に月額およそ3500万円の賃料を支払う契約でした。

しかし、開業から10カ月後には支払いが滞り、現在も支払わないまま営業を継続。

この事態を受け、大阪府はホテル側に対し未払い分の賃料の支払いと立ち退きを求めて提訴し、ことし6月、およそ26億円の支払いと立ち退きを命じる大阪高裁の判決が確定しました。

しかし、実際に大阪府が差し押さえられた額はわずか3000万円。

なぜ今も営業中のホテルから資産を回収することが出来ないのか。

その理由の1つが「資産隠し」だったのです。

誉田容疑者らは差し押さえを免れるために、もともと持っていた実体のない会社の名前を、ホテルと同じ名前に変更。

その会社にホテルの宿泊代金を移して、資産を隠していたとみられています。

■逮捕前に容疑者2人を独自取材

逮捕前、関西テレビは容疑者2人を独自取材しました。

(Q.資産隠しの疑惑があるがこれは事実か?)
【小寺孝明容疑者】・【誉田喜博容疑者】「…」

(Q.疑惑が事実なら、強制執行の妨害にあたると思うが?)
【小寺孝明容疑者】・【誉田喜博容疑者】「…」

(Q支払い命令が出ている26億円は公金だが?)
【小寺孝明容疑者】・【誉田喜博容疑者】「…」

資産隠しの疑いについて聞いたものの、答えることを拒否しました。

警察は捜査に支障があるとして、2人の認否について明らかにしていません。

■府の対応は適切だったのか 府は「あくまで対応は適切だった」

40億円もの金銭的被害を受けた大阪府。

しかしなぜこのような状況に至るまで事態を悪化させてしまったのでしょうか。22日、府の担当者が取材に応じました。

(Q.なぜここまで滞納額が膨らんだ?)
【大阪府庁舎管理課 阪田海彦参事】「相手方の方から、滞納賃料を支払う旨の誓約書が2回ほど出された。府としても支払い誓約に基づく、支払いを待っていた。結局、誓約も果たされないまま、滞納額が膨らんでいったのが事実」

(Q.滞納に対する府の対応は適切だった?)
【大阪府庁舎管理課 阪田海彦参事】「はい」

(Q.最後は刑事事件化した。本当に適切?)
【大阪府庁舎管理課 阪田海彦参事】「滞納始まって以降、できる限りの適切な催告書などの手続きをした上で契約解除した」

府はあくまで対応は適切だったと話しました。

府は10月末までの立ち退きを求めていますが、来年秋までにおよそ11万人の宿泊が予約されているということで、見通しは立っていません。

負の遺産とも言われた、「さきしまコスモタワー」に入ったホテルを巡る問題は、影響が長引きそうです。

■「公金26億円の回収は難しいのでは」と菊地弁護士

ホテルの資産が差し押さえられるのを免れるために、宿泊代金などを別会社の口座に隠していた疑いで今回、社長らが逮捕されましたが、裁判所が支払いを命じた26億円の回収は可能なのでしょうか?

「newsランナー」のコメンテーターの菊地幸夫弁護士はこのように話します。

【菊地幸夫弁護士】「このホテル運営の会社がどういう資産を持っているかです。普通のホテルであれば、建物を強制執行、差し押さえかければいいのですが、府の庁舎ということで、中を借りているだけですから。じゃあ何があるのか、銀行預金があるのか、どうなのか。それは資産隠しという形で、どこに行ってしまったか分からないということで、実際問題では回収は極めて難しい状況なのではないでしょうか」

ホテルの未払いはオープンしてほどなくして始まりましたが、府は貸し続けていたという状況です。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「大阪府の担当者は適切な対応だったと話していますが、そもそもあのホテル運営会社に貸したこと自体、どうだったのか。入札はしていますが、本当にその会社を見定めて、きっちりした会社だったかどうかを含めて、全体の府の対応は、これで適切だったのかは問われると思います」

府は公金の回収に手を尽くすとしています。

(関西テレビ「newsランナー」2024年8月22日放送)

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