逮捕されたのは、大阪府の咲洲庁舎に入る「さきしまコスモタワーホテル」の開発会社の社長、譽田喜博容疑者(62)と運営会社の社長、小寺孝明容疑者(64)です。
捜査関係者によりますと、2人は去年、資産の差し押さえを免れる目的で、宿泊料金の一部、合わせておよそ900万円を隠したとして、強制執行妨害の疑いが持たれています。
大阪 住之江区にある地上55階建ての咲洲庁舎はもともと大阪市の第三セクターが建設したビルでしたが、テナントの入居が進まずに経営が破綻したため、2010年に大阪府が購入して庁舎としての活用を始めました。
空き室が多いことが課題となる中、府は2017年にテナントを公募し、それに応じたのが「さきしまコスモタワーホテル」でした。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」などが近くにあり、インバウンドの観光客が見込めることが理由でしたが、ホテルは開業のおよそ10か月後から賃料などを滞納するようになったため府は会社側を訴え、ことし6月、賃料などの支払いと建物の明け渡しを命じた大阪高等裁判所の判決が確定しました。
これを受けて府は今月、会社側に対し、ことし10月末までに建物を明け渡すよう通知していました。
警察が詳しいいきさつを調べています。
小寺容疑者「大阪府とは円満に話し合いをしている」
逮捕された2人のうち、運営会社の小寺孝明社長は21日、NHKの電話取材に応じ、ホテルの今後について「裁判所の判決が確定したあと、大阪府とはことし10月31日に建物を明け渡す方向で円満に話し合いをしている。賃料の滞納分などについても、分割になると思うがきちんと払っていきたい」と話しました。
また、現在修学旅行客を中心におよそ8万人の宿泊予約が入っているとしたうえで、「宿泊客や大阪府に迷惑をかけないよう、できることを精いっぱいやって真摯(しんし)に対応していきたい」と話していました。
ホテルは厳しい経営状態続く
ホテルの開発会社「さきしまコスモタワーホテル開発」と、運営会社の「さきしまコスモタワーホテル」はいずれも7年前の2017年に設立され、大阪 中央区に本社があります。
咲洲庁舎のテナントの公募にあわせて、大阪府内の自転車販売会社や工務店が新たに立ち上げました。
信用調査会社の帝国データバンクなどによりますと、ホテルは2019年の開業当初、中国や韓国など外国人の観光客がおよそ80%を占めていましたが、その後、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで利用が大幅に落ち込んだということです。
感染状況が落ち着いてからは、国内の修学旅行客やビジネス客を中心に利用が回復したほか、外国人観光客の需要も取り込み、運営会社は去年2月期の決算で初めて黒字に転じたうえ、ホテルの稼働率も70%余りに改善していました。
しかし、コロナ禍以降の業績不振に加え大阪府との訴訟もあり、厳しい経営状態が続いていたということです。
咲洲庁舎とホテルをめぐる経緯
「さきしまコスモタワーホテル」は、大阪 南港にある人工島の1つ、咲洲に建つ大阪府の咲洲庁舎の中にあります。
地上55階建ての咲洲庁舎は、1995年に大阪市の第三セクターがおよそ1200億円をかけて建設しましたが、テナントの入居が進まず、経営は破綻します。
その後、2010年に大阪府が格安で購入し、商工労働部などの庁舎として活用しましたが、それでも建物全体のおよそ3割が空き室となっていました。
こうした中、府は2017年、7階から17階に入るテナントを公募し、それに応じたのが「さきしまコスモタワーホテル」でした。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や水族館の「海遊館」など集客力のある施設が近くにあり、インバウンドの観光客が見込めることが理由だったということです。
さらに、隣の人工島、夢洲では大阪・関西万博の開催が決まっていたこともあり、府の関係者はホテルの開業に期待を寄せていて、当時の松井知事は記者会見で「“負の遺産”だった咲洲庁舎にホテルが入ることで、ベイエリアの活性化の第一歩になる」と述べていました。
そして2019年1月、ホテルがオープンしました。
運営を担ったのは、大阪府内の自転車販売会社や工務店が新たに設立した会社です。
しかし、府によりますと、ホテルは2019年11月から賃料や光熱費などを滞納するようになります。
その額は合わせて3億2000万円余りに上ったということです。
このため、府は2020年7月に賃貸借契約を解除しました。
これについて会社側は当時、NHKの取材に対し、「エレベーターの不具合で4億円の工事費を負担したが、こうした欠陥について事前の説明はなかった。大阪府側に責任があると考えており、契約も有効なままだと認識している」などと説明していました。
一方、大阪府は「改修の工事費などは会社側が負担すべきだ」としたうえで、会社側に対し、建物の明け渡しなどを求める訴えを起こします。
そしてことし6月、会社側に賃料や損害金など合わせておよそ26億円の支払いと建物の明け渡しを命じた大阪高等裁判所の判決が確定しました。
これを受けて府は今月、建物をことし10月末までに明け渡すよう、会社側に通知しました。
ホテルにはことし6月の時点でおよそ11万人の宿泊予約が入っていて、修学旅行客への影響を考慮し、明け渡しまでに一定の期間を設けたということです。
府によりますと、これに対し、会社側は明け渡しに応じる意向を示していたということです。
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