2019年参院選での安倍晋三元首相の応援演説にやじを飛ばした札幌市の団体職員桃井希生さん(29)が、北海道警の警察官に排除され精神的苦痛を被ったとして道に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は19日付で道側の上告を退ける決定をした。裁判官5人全員一致の意見。表現の自由を侵害したとして道に55万円の賠償を命じた二審判決が確定した。
二審札幌高裁判決などによると、女性は19年7月、安倍元首相がJR札幌駅前で行った街頭演説の際、「増税反対」「自民党反対です」などと大声を上げた。警備に当たっていた警察官は肩や腕をつかんで場所を移動させたほか、計約1時間にわたり付きまとうなどした。
同高裁は、警察官の行為が不当な心理的圧迫を与えたなどとして違法性を認定。表現の自由を侵害したとも指摘し、道に55万円の賠償を命じた一審札幌地裁判決を支持した。
一方、第1小法廷は19日付で、警察官によるやじ排除について同様に賠償を求めた札幌市の団体職員大杉雅栄さん(36)側の上告も退ける決定をした。道に33万円の賠償を命じた一審判決を取り消し、警察官の対応は適法として訴えを退けた二審判決が確定した。
最高裁決定を受け、桃井さんは記者会見で「警察による付きまとい行為や表現できる権利など、論点を社会に残せたことは大きな意義があった」と話した。道警は「真摯(しんし)に受け止めて警護の万全を期していく」とのコメントを出した。
北海道警のやじ排除を巡る訴訟の最高裁決定を受け、記者会見する原告の桃井希生さん(左)と大杉雅栄さん=20日午後、札幌市
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