ロックガーデンを歩く参加者=いずれも青梅市の御岳山で
御岳山 秩父多摩甲斐国立公園の一角にあり、標高929メートル。霊峰としてあがめられ、山頂には武蔵御嶽神社があり、「御師(おし)」と呼ばれる神職がそれぞれ宿坊を営み、参詣客の世話をする。山上の集落では約40世帯120人が生活。ムササビが生息するなど動植物の宝庫としても知られる。JR御嶽駅から西東京バスのケーブル下で下車し、ケーブルカーの滝本駅から山頂近くの御岳山駅までは乗車時間6分。
◆ケーブルカーで山頂近くへ
木に張り付くようにして観察する参加者たち
まず、御岳登山鉄道のケーブルカーで「御岳山駅」へ上る。参加者は24人。ガイドの井口三月さん(61)がルーペを手渡してくれた。「これでじっくりと観察してみてくださいね」 いざ山道へ。穏やかな坂を上ったり下ったりするうち、ざわざわと水が流れる音が聞こえてきた。たどり着いたのは沢沿いの「ロックガーデン」。岩はもちろん、木々の樹皮や根っこ、登山道沿いの斜面…至る所に苔が生えていた。 前日の雨の影響で水を含み、木漏れ日を受けてきらりと光を反射させる。参加者は岩や木に張り付くように観察を始めた。◆150種類以上の苔が生息 苔トークが止まらない!
苔に触って感触を楽しめる
おそるおそる岩に生えた苔をのぞくと、レンズ越しに、形の異なるみずみずしい葉が何層にも重なっていた。なんという透明感。まるで自分が小人になって、大きな森の中に迷い込んだような気分になった。ギザギザした「ナメリチョウチンゴケ」
御岳山には150種類以上の苔が生息する。虎のしっぽのようなオオトラノオゴケ、少し赤くて手触りが硬いエダツヤゴケ、ギザギザしたナメリチョウチンゴケ―。配布されたリーフレットで種類を確認していると、井口さんが笑いながら教えてくれた。「名前を覚えるより、目の前の美しい苔を純粋に楽しんで」 お昼には宿坊「南山荘」による苔をイメージしたお弁当を食べながら、井口さんの苔トークが止まらない。「苔は水を吸う根がなく胞子で増殖します」「苔は時間泥棒なので、見始めると止まりません」 その後も苔を観察しながら山道を歩き、宿坊でティータイム。3回目の参加という八王子市の梅村広美さんは「御岳山の自然や苔、食事を満喫すると心が洗われる」と話した。◆「ルーペを通して苔ワールドへ」
苔の説明をする井口三月さん
御岳ビジターセンターの職員だった井口さんが、苔に目覚めたのは10年以上前の冬。雪の日に山の状況を確認しようと真っ白な雪をかき分けると、みずみずしい緑色のコツボゴケが宝石のように輝いていた。「こんなに一生懸命生きているなんて」。夢中になり、ついには御岳登山鉄道の山本英幸さん(51)に「ツアーをやったら絶対に面白い」と持ちかけた。 同社で数々の個性的なツアーを手がける山本さんも、最初は半信半疑だった。だが、2021年6月に初めて開催すると応募が相次ぎ、あっという間に人気企画に。「ルーペを通して苔ワールドに飛び込み、その美しさを心ゆくまで楽しんで癒やされる。それが魅力」と話す山本さんは「宿坊の方とも触れ合って、御岳山の人々の情の深さを感じ取ってほしい」と願う。神社の灯籠にも苔が生えている=青梅市の御岳山で
◇ ◇ 御岳登山鉄道による次回のコケツアーは10月に開催予定。詳細は同社ホームページで後日発表する。問い合わせは電0428(78)8123へ。岩に生えたさまざまな苔
◆文と写真・昆野夏子 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。