北海道千歳市の支笏(しこつ)湖畔で100年以上続く「丸駒温泉旅館」が、民事再生法に基づき経営再建を進めている。かじ取りを担う日生下(ひうけ)和夫社長(51)は、兵庫県豊岡市の城崎温泉で約1300年続く旅館で生まれ育った。父親が切り盛りする姿を見てきたことが今につながっていると話し「老舗はもともと地域で1番だったところ。何度も危機を乗り越えてきた」と自信をのぞかせる。(共同通信=出川智史)
1915年、初代の故佐々木初太郎氏が掘り当てた。湖を一望できる秘湯として人気だったが、負債がかさみ、新型コロナウイルス禍による客足の減少も追い打ちとなって2021年8月、民事再生法適用を申請した。
日生下さんは当時、各地でホテルを運営する「星野リゾート・マネジメント」の社員で、旭川市のホテルの事業モデルを構築したことで北海道に縁を感じていた。再生支援に乗り出した官民ファンドが探していた再建役に手を挙げ、「ここが変わるタイミング」と退職を決めた。
ロケーションの良さや、ひいきのファンの存在など高いポテンシャルがある一方、仕事の進め方が「縦割り」で繁忙時に対応できていないと感じた。ただ、現場は20年以上勤めるベテランぞろい。「自分は落下傘」と意識し、成功事例を共有し信頼関係構築に努めた。
フロントと調理場で業務をカバーし合えるようにし、コロナ禍で使われなくなったカラオケラウンジなどを食事会場に変更。経営状況が好転すると2022年8月、再建開始後初となる給料のベースアップも実現した。
「旅館業は水物。コロナ禍で最初に打撃を受け、復活するのは最後。だからこそ使命感がある」。客足はピーク時の7割まで回復したといい「あと1、2年で自主再建を終えたい」と語った。
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