がんなど命に関わる病気と闘う患者の不安な気持ちにいつでも寄り添えるようにと、人工知能(AI)が会話相手となるメンタルケアサポートシステムを岡山大の研究チームが開発した。同大病院が6月から導入しており、他にも東北大病院などで採用。病院での実用化は全国初という。(共同通信=井上陽南子)
入院患者の利用を想定し、通信アプリLINE(ライン)を使って24時間やりとりができる。会話の相手は、友達のように話せる小中学生向けの「心さん」と、言葉遣いが丁寧な高校生以上向け「葵さん」の2パターンを設定。医療行為に関わる発言はせず、患者の不安や孤独に寄り添う返答をするようプログラムされている。
例えば、患者が「治療がうまくいくか不安」と送ると「それはとても自然な気持ち」と肯定。「治療について具体的に心配なことはありますか?」と会話が続く。
岡山大の長谷井嬢准教授(整形外科)が、骨や筋肉などにできる骨軟部肉腫という希少がんの患者を長年診察した経験から着想し開発した。若者に患者が多く、長谷井准教授が担当したのも10代が大半。不安が強くなる夜間や医療スタッフが対応しづらい休日、人に話しにくい悩みなどを「自分のタイミングで話せることが重要」と考えた。
「AIだからこそ話せることもある」といい、会話の内容は医療スタッフにも共有しない。病状などに関わる会話内容があった場合、プライバシーを守りながらどのように医療スタッフへ共有できるかといった課題は残るが、「人とAIが連携し、より良い治療を提供できるようにしたい」と意欲を示している。
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