外国生まれなどで日本語指導が必要な小中高生が2023年度時点で約6万9000人に上り、約10年前から倍増したことが8日、文部科学省の調査で分かった。このうち1割が日本語について特別な指導を受けておらず、支援体制の構築が追いついていない現状も明らかになった。

政府は国内の人手不足を補うため、海外人材の受け入れを拡大し、家族呼び寄せの道も広げている。子どもの学習機会を確保し、人材の定着を促すことが急務だ。

調査は各教育委員会を対象とし、日本語で日常会話が十分にできない公立小中高校の児童生徒らについて聞いた。前回調査の21年度時点(約5万8000人)から18.6%増え、12年度時点(約3万3000人)からは約2倍になっていた。

国内では23年末時点の在留外国人数が約341万人で過去最多となり、学校に通う子どもも増えている。文科省担当者によると、新型コロナウイルスの水際対策の緩和なども影響したという。

外国籍児童生徒の母語別の在籍割合を見ると、ブラジルなどで使われるポルトガル語(20.8%)が最も多く、中国語(20.6%)やフィリピノ語(15.4%)が続いた。

要支援者が増える一方、学校側の対応は追いついてない。日本語の基礎を学ぶプログラムや各教科の補習など、特別な指導を受けている児童生徒は外国籍で90.4%、日本国籍で86.6%。21年度比でそれぞれ0.6ポイント、1.5ポイント減少した。

特別な指導を行っていない自治体からは、理由として「日本語指導の教員がいない」「個別に対応する人材が不足している」といった声が寄せられ、国への要望として人材配置や財政面での支援などが挙がった。

進学状況にも依然として課題がみられた。中学生の高校などへの進学率は全中学生を8.7ポイント下回る90.3%で、高校生の大学などへの進学率は全高校生を28.4ポイント下回る46.6%。高校段階での中退率も全高校生の7.7倍にあたる8.5%だった。日本語能力が学習や学校生活における困難につながっている可能性がある。

日本語指導が必要な児童生徒は今後も増える可能性が高い。政府はこれまで特別なスキルや専門性が乏しい外国人労働者の長期就労や家族帯同に慎重だったが、深刻な人手不足を受け、ここ数年で受け入れ拡大へ転換した。

製造業や建設業、農漁業などの人手不足を補ってきた技能実習は27年にも新制度「育成就労」に改める。従来は原則として3〜5年の就労だったが、一定の技能や日本語力を身につければ「特定技能」に移行し日本で長く働ける道筋を整えた。

昨年6月には家族帯同の可能性も広げた。配偶者や子どもを呼び寄せられる特定技能「2号」の対象業種も拡大。「特定技能」外国人の受け入れ枠について、24年度から5年間の上限を2倍超の82万人に設定した。

父母に同伴して「家族滞在」として入国した子どもの場合、就労制限のない「定住者」「特定活動」の資格を取るには高校卒業が条件となる。

各国で少子化が進み、新興国の若者をめぐる争奪が激化しつつある。子どもが十分な教育を受けられない国は優秀な人材を獲得できなくなる。海外出身者にも等しく学習機会を保障することは、社会からの疎外を防ぐだけでなく「選ばれる国」になる上で欠かせない。

政府は6月、外国人が日本で生活しやすくなる施策の行程表となる「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を改訂。学校における日本語学習についても、アドバイザーを派遣するといった支援体制を拡充し、26年度までに全ての児童生徒が必要な日本語指導を受けられることを目指すとした。

文科省担当者は「好事例を持つ自治体の取り組みを全国に周知するなどして、現場の支援に努めたい」としている。

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