山根新社長が陳謝「痛恨の極み」
8月19日から補償の受付開始へ
ことし6月までの半年間の決算 大幅減益
山根新社長 今後の課題は
小林製薬 創業家の対応は
紅麹問題 これまでの経緯
8日付けで新しく社長に就任した小林製薬の山根聡氏(64)は、8日午後3時半から大阪市で開かれていることし6月までの半年間の決算会見に出席しました。一連の問題について、「あってはならないことを起こしてしまい、痛恨の極みだ。改めて、おわびを申し上げます。他者をおもんぱかる想像力が事業の出発点だが、これを見失ってしまった。会社の歴史において最大の難局にある」と述べ、陳謝しました。
小林製薬は、8日、紅麹の成分を含むサプリメントのうち対象商品を摂取し、症状との間に相応の因果関係が認められる人を対象に、医療費や慰謝料、休業に伴う補償などについて、支払いを始めることを発表しました。受付は8月19日からで、死亡した人については別途、対応するとしています。
小林製薬はことし6月までの半年間の決算を発表し、紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題を受けて、製品の回収にかかる費用などとして新たに40億円あまりの特別損失を計上しました。この結果、最終的な利益が前の年の同じ時期から81%減少して14億円となり、2年ぶりの減益となりました。
小林製薬の新しい社長に就任した山根聡氏は、創業家以外から初めてとなる経営トップですが、健康被害に対する補償や経営の抜本的な改革など、信頼の回復に向け、山積する課題に直面することになります。山根新社長は64歳。1983年に入社し、長年にわたって経営企画や財務などを担当し、2016年からは専務をつとめていました。一連の問題で、7月、会社の取締役会が公表した総括では、山根新社長は、危機対応を率先して行うべき地位にあり、その経営責任は重いとされました。しかし、経営トップ2人の辞任が決まったことを受けて、会社全体を取りまとめるのに必要な経験や資質を備えているとして、新たな社長に選ばれました。会社の業績は、2023年まで最終的な利益が、26期連続の増益でしたが、問題の発覚後、会社の売り上げにも影響が出ています。そうしたなか、山根新社長は、業績の改善をはかりながら、健康被害に対する補償への対応や、品質管理体制の再構築にどう取り組むか、課題に直面することになります。また、今回の問題では、会社が健康被害が疑われる事例を把握したあとも、適切な経営判断ができず、消費者への注意喚起や製品回収の判断が遅れたことが批判されました。さらに、経営責任を取る形で辞任した小林一雅前会長を特別顧問とし、月額200万円の報酬を支払うことや小林章浩前社長が健康被害の補償を担当する取締役としてとどまることについて、創業家の影響力が維持されているという指摘もあります。会社では、コーポレートガバナンス=企業統治の抜本的な改革を行うための経営体制について、2025年3月の株主総会で諮る方針を明らかにしていますが、社会からの信頼を取り戻すことが出来るのかが問われています。
小林製薬は、1886年に創業者が前身となる会社を名古屋で創業し、医薬品の卸売業界にも参入。その後、大阪へと進出しました。1919年に現在の会社が設立されてからは、これまで6代にわたって創業家出身の社長が務めてきました。会社をメーカーへと転換させ、成長の立て役者と言われているのは、4代目の社長を務めた小林一雅前会長(84)です。トイレの洗浄剤を開発して市場に投入し、高度成長期に水洗トイレが普及するなか、ヒット商品へと押し上げました。ニッチな製品をいち早く開発し、分かりやすいネーミングをつけたうえで、多くの広告費を投じて売り出す独自のビジネスモデルで、商品の知名度とシェアを拡大させ、売り上げを伸ばしてきました。しかし、小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントをめぐっては、ことし1月に健康被害が疑われる事例が会社に報告され、その後、ほかの事例の報告も相次いだにも関わらず、社外取締役への報告や公表に2か月以上かかったことが問題となっています。7月23日に公表された外部の有識者委員会がまとめた報告書では、「遅くとも2月上旬以降には全社を挙げて早急に対応すべきだった」と指摘されました。これを受けて問題の責任を取る形で、創業家出身のトップ2人、小林前会長と長男である小林章浩前社長(53)の辞任が決まりました。会社の取締役会が公表した総括では、小林前会長については、今回の対応に直接関与していないものの、行政への報告の遅れもあり、経営責任は重いとされたほか、8日付けで退いた小林前社長については、危機対応へのリーダーシップを発揮することが出来ず、結果として公表の遅れなどを招いたことの経営責任は重大だとされました。しかし、新たに設けられた特別顧問に就任した小林前会長に対して、通常の顧問に支払われる報酬の4倍にあたる月額200万円の報酬が支払われることが明らかになっています。これに対して、専門家からは、「危機意識が低い」という指摘も出ています。さらに一連の問題が明らかになってから、これまで会社側が開いた記者会見は、発覚直後の3月22日と29日の2回のみで、先月、創業家出身の経営トップが辞任を決めたさいも記者会見は開かれませんでした。会社のガバナンスのあり方などが問われる状況となっています。
小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントの問題について、公表までの経過や健康被害の訴えの状況などをまとめました。小林製薬に医師から健康被害が疑われる最初の症例の報告があったのは、ことし1月15日。その後も報告が相次いだことから、社内で検証を進め、2月6日には小林章浩前社長にも報告されました。そして、検証の結果、製品に想定しない成分が含まれている可能性があることが判明。会社が製品の自主回収を決め、問題を公表したのは最初の報告から2か月以上がたった3月22日でした。問題の公表後、会社には健康被害の訴えが数多く寄せられています。小林製薬によりますと、8月4日時点で、死亡に関係する問い合わせ件数は319件にのぼるということです。このうち、会社が製品の摂取と死亡との関係について調査対象としているのは、107件で、その具体的な内訳は調査完了が21件、調査継続が32件、そして、調査の同意が得られないことなどから調査が困難としているのが54件となっています。また、「調査完了」となった21件について、会社は現時点では因果関係の有無など、詳細な回答は控えるとしています。一方、原因の解明に向けた調査も進められています。製品から検出された想定しない成分については、3月29日、青カビから発生することがある「プベルル酸」という物質の可能性があるという調査結果を発表。5月28日には厚生労働省と国の研究所が「工場内の青カビが培養段階で混入して、『プベルル酸』などの化合物が作られたと推定される」と公表しています。「プベルル酸」のほかに、被害が報告された製品の原料ロットから2種類の化合物も検出されていて、現在も原因となった物質を特定するための調査が続いています。会社の品質管理をめぐっては、7月、外部の有識者委員会がまとめた報告書では、製造工場で青カビが発生していたことを現場の担当者は認識していたとした上で、「製造ラインの品質管理は現場の担当者にほぼ一任する状況で人手不足が常態化していた」などと指摘されています。
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