退官を前に記者会見する最高裁の戸倉三郎長官(7日、東京都千代田区の最高裁)

10日で定年退官する最高裁の戸倉三郎長官(69)は7日記者会見し、裁判のIT(情報技術)化を巡り「従来の裁判の形を大きく変える可能性を秘めている。若い世代の積極的な関与が不可欠だ」と述べた。

戸倉長官は2017年に最高裁判事に就き、22年から長官を務めた。在任中は民事裁判のIT化などに力を注ぎ、今年7月には最高裁大法廷の裁判長として、強制不妊手術を認めた旧優生保護法の規定を憲法違反とし、国の賠償責任を認定する判決を言い渡した。

会見では「(長官の)重い責任に応える仕事ができたかは心もとないが、全力を尽くし、思い残すことはない」と振り返った。40年以上に及んだ裁判官生活を、開催中のパリ五輪になぞらえて「メダルも入賞も果たせなかったが、自己ベストの記録を出せてさわやかな気持ちだ」と総括した。

その上で「若い裁判官は新しいことに果敢に挑戦し、ベテランは経験に裏打ちされた知恵で支えてほしい」と後進にエールを送った。

後任の今崎幸彦最高裁判事(66)については「刑事裁判官として卓越した力を持ち、人格識見も優れている」と評価した。今後本格化する刑事裁判のIT化や、裁判員裁判での公判前整理手続きの長期化といった課題に対して「大いに力を発揮すると期待している」と語った。

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