捜査情報を漏えいしたとして地方公務員法違反罪に問われた元鹿児島県警巡査長の判決が5日、鹿児島地裁で言い渡される。この事件では漏えい先としてニュースサイト「ハンター」(福岡市)を家宅捜索した鹿児島県警の異例の捜査手法が疑問視されている。代表の中願寺(ちゅうがんじ)純則さん(64)も本紙の取材に「不当捜査だ」と批判した。(西田直晃)

 鹿児島県警「情報漏えい」事件 ニュースサイト「ハンター」に捜査資料を漏らしたとして、鹿児島県警は2024年4月、元巡査長=地方公務員法違反の罪で起訴、5日判決=を逮捕。ハンターの事務所を家宅捜索した。先月の初公判で元巡査長は起訴内容を認めながら「警察組織を変えたかった」との動機もあったと説明した。押収データを端緒に県警は5月末に前生活安全部長の本田尚志被告=国家公務員法違反の罪で起訴=を逮捕した。

ハンターの事務所。パソコン返却後に県警内部資料のデータ消去が行われた

 鹿児島県警は4月、元巡査長による捜査情報の漏えい先と判断し、ハンター事務所を捜索。中願寺さんのパソコンや携帯電話などを押収した。パソコンのデータには別の内部告発に関する文書画像もあり、5月に情報漏えいの疑いで前県警生活安全部長を逮捕した事件のきっかけとされる。  中願寺さんは「メディアの家宅捜索がなぜ必要だったのか。目的は『内部告発者を許さない』という県警の組織防衛ではないのか」と疑問視する。  異例の強制捜査には、日本ペンクラブが「民主主義社会の根幹を脅かす極めて深刻な事態」と声明で非難。新聞労連、日本ジャーナリスト会議福岡支部などからも抗議が相次いでいる。  過去の判例でも「取材の自由」は憲法上の権利として尊重されており、京都大の曽我部真裕教授(憲法)は「鹿児島県警の捜索は問題が大きい」と言う。捜査機関にも「取材源の秘匿」を侵害しないよう配慮が求められている。県警側は「取材の自由は理解している」と強調するが、曽我部氏は「鹿児島県警は『取材の自由』にどう配慮したのか、今からでも明確に説明する責任がある」と批判。  捜索令状を出した裁判官の姿勢も問われるという。「令状請求の対象が代表の個人名であれば、見逃すこともあり得るが、メディアと把握した上での判断なら、令状主義の機能不全を意味する。本来は、新聞・テレビなどの既存メディアも大いに報じるべき問題だ」と指摘した。 

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