2014年9月に起きた御嶽山噴火災害の被災者家族らでつくる「山びこの会」が29日、まだ見つかっていない登山者5人の捜索を今後も継続するか検討するため、現地を調査登山した。事務局代表のシャーロック英子さんは下山後、不明者の家族から意見を聴いた上で、結論を出す考えを明らかにした。

 死者58人・行方不明者5人を出した御嶽山(岐阜・長野県境)の噴火災害から10年になることを踏まえ、山びこの会は前日の28日、慰霊登山を実施。8組13人の被災者家族が山頂の剣ケ峰で黙禱(もくとう)を捧げた。

 行方不明者の問題では、長野県が主体となって昨年、大がかりな捜索を実施。不明者の発見には至らず、県は捜索を終結する姿勢を崩していない。このため、山びこの会は、民間の山岳捜索会社「マウンテンワークス」(上田市)に協力を依頼。この日は同社代表の三苫育氏や行方不明者家族ら8人で、剣ケ峰より東の一帯(標高約2700メートル)に入り、現地を視察した。

 山びこの会が木曽町で開いた記者会見で、三苫氏は「この10年で地形が大きく変わった場所もある」と報告。その中で不明者の手がかりを見つけることの難しさを示唆した。シャーロックさんも「自然の大きさというか、人間の小ささを思い知らされるような地形だった。10年という節目は、いろいろ決断するには良い時期だと思う」と発言。不明者の家族と連絡を取り、会としての方針を決める考えを示した。

 一方、おいの亮太さん(噴火当時19)が行方不明になっている愛知県刈谷市の野村正則さん(61)は「捜索をやめたら、亮太を家に帰すことができないことが既成事実になってしまう。それだけは避けたい」と話した。(佐藤仁彦)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。