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    初公判で起訴内容認める

初公判前の現場には父親の姿

現場となったこども園の駐車場には、23日朝も花束や飲み物などが供えられていました。

午前5時半すぎには、亡くなった河本千奈ちゃんの父親が訪れ、静かに手を合わせていました。

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初公判で起訴内容認める

事件はおととし9月5日、牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」の駐車場に止められた通園バスの車内に、園に通っていた河本千奈ちゃん(当時3)がおよそ5時間にわたって置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなりました。

この事件で、当時バスを運転していた元園長の増田立義被告(74)は園児らが降りる際に車内の確認を怠ったほか、クラスの元担任の西原亜子被告(48)は、欠席したと思い込み、保護者への確認を怠ったとしてそれぞれ業務上過失致死の罪に問われています。

23日、静岡地方裁判所で開かれた初公判で2人は「間違いありません」などと述べ起訴された内容を認めました。

被告人質問では、弁護士から、千奈ちゃんの命を奪ってしまったことをどう思うか問われたのに対し、元園長は「腹立たしく、情けなく思っています」と答えました。その上で元園長は、「千奈ちゃんを失わせてしまったことを両親におわび申し上げたい。私の責任だと思っています」などと述べ、謝罪しました。

元園長と元担任の様子は

元園長と元担任は、いずれも上下黒いスーツ姿で、マスクを着用して弁護士の隣に並んで座りました。

2人はうつむきながら座っていて、裁判長に促されて証言台の前に並んで立ちました。

裁判長から「起訴された内容に間違いはありませんか」と聞かれると、元園長は「はい」と答えました。

また、元担任は「間違いありません」と答えました。

裁判には千奈ちゃんの両親が「被害者参加制度」を利用して審理に臨んでいて、法廷には傍聴席から見えないようについたてが設けられていました。

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“本心で話してほしい”父親の思い

「被害者参加制度」を利用して審理に参加する、千奈ちゃんの両親。

初公判では、父親が元園長と元担任の2人に対して、当時の対応や責任の所在などについて、直接質問することにしています。

また、5月15日に予定されている2回目の審理では、両親がそれぞれ、意見陳述を行うということです。

39歳の父親は、初公判を前に取材に応じ、「2人には、裁判のために用意したことばではなく、本心で話してほしい。裁判を通して、改めて園の管理体制がずさんだったことが明らかになると思う」と述べました。

また、意見陳述については、「事件直後に変わり果てた姿で千奈と会った時の気持ちや、これまでどのような思いで生活してきたのかを伝えたい。過去の同様の事件の中でも最も厳しい刑を求めたい」と話していました。

傍聴希望者 “事件の経緯を確認したい” “やりとりに関心ある”

静岡地方裁判所によりますと、初公判は傍聴席28席に対して傍聴を希望した人は67人で、倍率は2.39倍でした。

裁判所では、開廷する1時間半前の午前8時半ごろから、傍聴を希望する人たちが列を作りました。

静岡市の60代の男性は「事件があった当時、通勤のために毎日、川崎幼稚園の前を通っていました。自分の孫が河本千奈ちゃんと同じ3歳ということもあり、親の気持ちを考えると許せないです。事件の経緯を確認したくて傍聴を希望しました」と話していました。

また、静岡県島田市の60代の男性は「5時間も置き去りにされて亡くなったのは痛ましく、あってはならないことだと思います。きょうはご遺族が元園長に直接、問いかけると思うので、どのようなやりとりがされるのか関心があります」と話していました。

事件のいきさつ

これまでの捜査やこども園の説明などをもとに事件のいきさつをまとめました。

おととし9月5日の朝、こども園ではふだんの運転手の都合がつかず、当時の園長の増田立義被告が急きょ、通園バスを運転することになりました。

バスには70代の乗務員の女性も乗って園を出発し、5人の園児を乗せたあと午前8時43分に、河本千奈ちゃん(当時3)を自宅の前でバスに乗せました。

園に到着すると、乗務員は1人の子どもの手を引いてバスから降ろし、ほかの園児にも降りるよう声をかけて園に入りました。

通常であれば運転手が、バスを降りる前に座席の後方を確認していたということですが、元園長はこれを怠りました。

バスは車内に千奈ちゃんが残っていたにもかかわらず、午前9時前に園から200メートルほど離れた屋根のない駐車場に止められ、施錠されました。

園では、さらにミスが重なります。

本来、欠席連絡のない園児が教室にいない場合、クラス担任が保護者に連絡を入れて確認をとることになっていましたが、元担任の西原亜子被告はこれを怠りました。

当時、新型コロナの影響で連絡なく欠席するケースが増えていて、これまで無断欠席をしたことがなかった千奈ちゃんについても、欠席だと思い込んだということです。

およそ5時間後の午後2時10分ごろ。

千奈ちゃんはバスの中で衣服を脱ぎ、倒れた状態で見つかりました。

麦茶を入れていた水筒は空になっていたといいます。

事件を受けて、静岡県牧之原市が設置した第三者委員会が、3月に検証結果をまとめた報告書では、元園長について、「子どもの命を預かる業務であるという意識が薄かった」などと指摘しています。

また、元担任らが所在確認を一切行わなかったことについては、「園児の安全や成長に向き合う教育関係者としての責務を怠ったと言わざるをえない」としています。

国は安全対策を強化

今回の事件を受けて、国は、去年4月から全国の幼稚園や保育所などの送迎バスに安全装置を設置するよう義務づけました。

対象は、およそ2万4000施設にある5万4000台余りで、ことし3月末までにすべての設置を完了するよう自治体を通じて呼びかけてきました。

これについて、加藤こども政策担当大臣は、4月5日に開かれた関係閣僚会議で、「すべての送迎用バスに安全装置を装備できたものと承知している」と述べています。

また静岡県は、事件を受けて幼稚園や保育所などが送迎バスの安全管理マニュアルを作る際に参考となる指針を作成し、各施設にマニュアルの作成や見直しを求めました。

指針では、バスの運転手や同乗する職員について、園児の人数確認を行うなどの役割を明記しています。

また、施設側には、運転手などが急に不在になった場合に備えて臨時の運行体制を定めておくことや、登園時の人数確認の際には、ダブルチェックの体制を整えることなどを求めています。

園を運営する学校法人は

「川崎幼稚園」では、再発防止に向けて、外部の講師を招いて職員の研修を行うなどの取り組みを進めてきましたが、バスによる園児の送迎は今も中止しています。

園によりますと、今年度、在籍している園児の数は78人で、事件が発生する前と比べて半数以下に減っているということです。

また、今年度入園した園児は1人だけだということです。

元園長らの初公判が開かれることについて、園を運営する学校法人「榛原学園」は、「千奈さんのご冥福をお祈りし、償いをするとともに、すべての子どもたちのために二度とこのような悲惨な事故を起こさない、安全で安心していただけるこども園でいられるよう努力し続ける所存です」とコメントしています。

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