酷暑で涼しい服装が増える中、「男性の短パン姿」で論争が起きている。テレビ番組をきっかけに議論が広がり、女性からは「スネ毛なんか見たくない」「オジサンの短パンは許せない」という声がある一方、「ファッションは自由」「逆に長ズボンを見ると暑苦しい」といった反応も出ている。政府もクールビズを進める中、TPOとして「男性の短パン」はアリか、ナシか。『ABEMA Prime』では職場ドレスコードについて考えた。
【映像】職場の服装、気になる「許せるランキング」
■男性の短パン、なぜ嫌われる?職場ファッションの許容度わずか7%職場の服装は、どこまで許容されるのか。識学が2024年2月、300人に調査(複数回答)したところ、半袖Tシャツ(無地)35.3%、スニーカー33.3%、半袖Tシャツ(柄有り)25.0%、パーカー21.7%、短パン7.0%、キャップ4.3%、ビーチサンダル3.3%といった結果となった。
日本服装心理学協会代表理事の久野梨沙氏は、ビジネス上での短パンは手放しに勧められないと考える。「企業がオフィスカジュアルを導入する時に、大きなハードルとなるのが、ジーンズと短パンだ。この2つは『許すことができない』とする企業が多い。短パンは肌が見えるかどうかで、違和感が目立つ。他者との差がわかりやすいのも理由で、プライベートならまだしも、オフィスシーンでは『相手からどう見られるか』が重要」とポイントを挙げた。
千葉でホテルなどを営む下山和人氏は、365日短パンで過ごすことから“短パン社長”と呼ばれている。「個性や主体性が求められ、『野球部は丸刈りでないとダメ』という時代ではなくなっている」。そもそも約20年前に短パンをはき始めたきっかけは、「外仕事で暑いこと」に加えて、「社長業がみんな背広を着ている中、飛び抜けて覚えてもらう方法はないか」と考えた結果だった。「『短パンの人』とブランディングできる。冬は鳥肌が立つほど寒いが、もうやめられない」。気温マイナス10度の冬のドイツでも短パン姿で、「この日本人はどうかしている」と思われた。
下山氏自身は2つの会社を経営している。「ホテル運営会社は、一応ユニホーム的なものはあるが、特にそれ以外の縛りはない。もう1社のゴーカート場は、今の時期は気温35〜37度になるため、上着のユニホームはあるが、こちらもそれ以外は特にない」。
接客業として、短パン姿は客にどんな印象を与えるのか。「フロント業務では、上半身しか見えない。清掃やベッドメークも規制はしていない」。短パンに対して、世間ではスネ毛への悪印象もあるが、「自分自身は最近、脱毛へ行こうかなと思っている」そうだ。
■人と違う服装は気になっちゃう?東アジアに「同調行動」の傾向EXITの兼近大樹は、「ファッションは見せ方だ」と説く。「やりすぎる人が現れると、普通になる。僕らがダメージスーツを着ると、『さすがにダメだよね』と言う人があふれかえって、『短パンは別にいい』と変わっていく。より過激なものが出てくると、“普通”の基準が落ちてくる」と、流れを読んだ。
コラムニストの小原ブラス氏は、営業であれば「短パンでなくても、『スーツのサイズが合っていない』『ヨレヨレだ』などで、相手の信頼度を測って、ビジネスをする」と語る。「一概にファッションによる評価が全てなくなってしまうと、人の判断材料もなくなってしまう」と、ファッションの効果も指摘。
現役保育士の育児アドバイザー・てぃ先生は、「国民性として小さい頃から、周囲と比較するクセが付いている」と指摘する。「ファストファッションが盛んになり、トレンドもどんどん変わっていく。そうなると周囲の服装も、無意識のうちに気になってしまう」とも述べた。
久野氏は、心理学の視点から、「東アジアは、みんなと同じ行動をしているかの“同調行動”に重きを置く文化」との実験論文があると説明する。「ファッションでも『同じ格好をしているのか』が、国民性として気になるところがある」と、横並びを求める国民性を説いた。
■時代によって変わるファッション 近年では「東日本大震災」「新型コロナ」が節目にドレスコードがカジュアルになったタイミングは2度あり、まずは2011年の東日本大震災だという。「節電要請により、クールビズでないと『節電していないのでは』と見られるのを恐れた企業が、一斉に軽装を導入した」。もうひとつがコロナ禍で、「在宅勤務のカジュアルな格好から、出社勤務に戻る時に、働く側から『また暑い、窮屈な格好をするのか』と声が上がり、企業が対応せざるを得なくなった」と、災害をきっかけにした変化を例に出した。
小原氏は、ファッションの価値観は「徐々に変わる」と語る。「女性も和服文化だったが、関東大震災を経て、『洋服の方がいい』と着る人が増えた。短パンの人も増えてくれば、あっという間に受け入れられるようになるだろう」とした。
モデルでラジオナビゲーターの長谷川ミラは、かつて住んでいたヨーロッパとの差を語る。「ヨーロッパだとみんなヨガパンツで学校や仕事へ行くが、海外帰りの友人が約10年前、日本でヨガパンツだけで電車に乗っていたら、おばあちゃんに『スカート履き忘れているよ』と言われた。スパッツだけで歩いていると思われていた」とエピソードを紹介した。
保育の現場では「一昔前までジャージ姿が当たり前だった」と、てぃ先生が振り返る。「最近では『ジャージはだらしない』と言われるようになった一方で、『ジーンズOK』な保育園などが増え、一歩進むと『短すぎなければスカートもOK』となっている。どんどん変わっていくのだろう」。
(『ABEMA Prime』より)
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