26日に開幕するパリ五輪と同じフランスを舞台にした、もう一つの「五輪」が9月に開かれる。職人らが技術を競う技能五輪国際大会だ。競技のひとつ「造園」での世界一を目指し、日本代表2人が岡山市内で練習に励んでいる。

 6月中旬の夕方。市内の高校で練習用に造った庭を黙々と整える若者たちがいた。倉敷市の造園会社「イカサ緑地」の田子雅也さん(22)と福元健悟さん(19)だ。

 2人が出場する国際大会はフランス・リヨンで開催され、70カ国・地域から約1400人が参加する。自動車板金やグラフィックデザイン、西洋料理など59職種があり、原則22歳以下の選手が出場する。「造園」には欧州を中心に20の国・地域の選手が挑み、4日間、最長で計22時間という長丁場の戦いとなる。

「うちの社員とやらないか」

 2人が組んだのは昨年8月から。田子さんはその11月に愛知県で開かれる「技能五輪全国大会」を目指していたが、ペアを組む相手が見つからない。以前から田子さんを知っていた同社の青江勇二社長(47)から「うちの社員とやらないか」と声をかけられ、紹介されたのが福元さんだった。

 群馬県渋川市出身の田子さん、大阪府池田市出身の福元さんはいずれも農業系の高校を出ており、部活動でこの大会を経験していた。

 埼玉県の大学に通う田子さんは在学したまま同社に所属し、夏休みを使って岡山に滞在。石積みや張り石、全体の仕上げを担い、福元さんがフェンスやアーチといった木工系を担当した。

 練習時間は多く取れなかったが、田子さんは「1時間で石を積み上げるとか、一つひとつタイムを決めて練習した」。福元さんは「時間配分がきっちりしていて、デザインでも飛び抜けたのを造るのがすごい」と田子さんの実力を肌で感じた。

全国大会で優勝

 そして、全国大会本番。岡山県代表として出場した2人は、「造園」で技を競った全国21チームの頂点に輝いた。県代表が造園を制したのは初の快挙。2人は国際大会への切符を手にした。

 以前から海外勢との対戦を目標としていた田子さんは「年齢的にラストチャンスなので安堵(あんど)の方が強かった」と振り返る。大学の単位を取り終え、4年生になるこの春、岡山に転居。国際大会への準備を進めている。

 2人は本番のタイムスケジュールを想定し、毎週木曜日から日曜日の4日間かけて練習を重ねている。練習用の庭の図面は、業界団体「日本造園組合連合会」(東京都)が作ってくれたものだ。

 田子さんは「まずは図面通りに寸法をきっちりとすれば点数を落とさない」と話し、デザイン面でも「仕上げの花で印象がよく出来たら」とレベルアップを図っている。福元さんは「作業ペースをみながら時間内にできるように」と工程に注意を払う。

 直近5大会の日本代表の最高成績は銀メダル。「金」を狙う2人を支える青江社長は、結果よりも過程に注目している。「どれだけ自分に負けず、諦めず、練習できるかだ」(北村浩貴)

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