岐阜協立大学(岐阜県大垣市)で2022年、硬式野球部の男子部員(当時22)が練習中に倒れて死亡した問題で、適切な応急措置を取らなかったとして、部員の遺族が野球部の元監督や大学側などに総額約1億2千万円の損害賠償を求め、岐阜地裁に提訴した。提訴は18日付。遺族の代理人弁護士が明らかにした。
訴状や当時の大学側の説明によると、22年5月14日、練習のためグラウンドに集合した野球部員らは元監督の指示で午前10時20分ごろからランニングを開始。男子部員は1時間ほど走り続けた後に倒れた。水分補給をしようとしたが、嘔吐(おうと)を繰り返し、まもなく意識を失った。救急車での搬送などを進言する声もあったが、元監督らは男子部員を車で大垣市内の病院に搬送。倒れてから病院に到着するまで約40分が経過していた。
男子部員は病院で新型コロナウイルスの陽性反応が確認され、対応が可能な同市内の別の病院に同日夕に移った。その後も体温が40度前後の高温状態が続き、翌15日午後に死亡が確認された。
遺族側は医師の鑑定に基づき、男子部員の死因は熱中症と主張し、訴状では、元監督は終了時間を決めずに長時間のランニングを指示すれば、熱中症を発症する可能性を予見できたと指摘。男子部員が倒れた後も、意識障害は明らかなのに救急車を呼ばず、体を冷やすなどの応急措置も取らなかったとして、元監督の対応と男子部員の死亡には因果関係があると訴えている。学校側には使用者責任があるとしている。
代理人の中村亮介弁護士によると、元監督の対応と死因との因果関係を巡り、大学側と遺族側で折り合わず提訴に至ったという。遺族は、最初の搬送先の病院と転送先の病院の医師らに対しても迅速な冷却措置を取らなかったとして損害賠償を求めている。
発覚当時の記者会見で竹内治彦学長(当時)は男子部員を救急車で搬送しなかった点について「間違っていたと考えている。救急車の方が早かったのではないかという疑問が当然、持たれる」「ランニングは通常20~30分で終わるので、時間がやや長い。必要な練習だったか調査する」などと話していた。
同大学は朝日新聞の取材に「訴状が届いていないのでコメントは控えたい」と回答した。(保坂知晃)
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