2000年に施行された「成年後見制度」。高齢化が進む中で、不動産や預貯金の管理、遺産分割や相続手続き、介護や福祉サービスの利用契約、施設への入所・入院に関する契約などを本人一人で行うことが難しい場合に、後見人が支援する制度だ。本人の自覚がないまま不利益な契約を結んでしまうなど、悪質商法の被害から被後見人を守るなどの目的で、昨年度は約25万人の利用者がいるが、後見人をめぐるトラブルも多数起きている。『ABEMA Prime』では、数多く後見人を務めてきた南和行弁護士が、過去に同性の老カップルが後見人により離れ離れになった事例を紹介。さらに現状について「後見人ガチャみたいな問題も起こりがち」と述べた。
【映像】後見制度 年間利用者数の推移
■80代の同性・老カップルを襲った事態 後見人により離れ離れに南氏は、自ら後見人を多数務めると同時に、後見人に関するトラブルの相談も多く受けている。「本当にこのケースについて話し出すと泣いてしまう」というのは、80代の同性・老カップルの例だ。
大阪のとある郊外で、80代の女性が2人で幸せに暮らしていた。2人は同性カップルで親族関係がなかったため、将来に備えて何かあった時のために、親族ではないからこそ遺言や任意後見契約など、親族でなくても後見人になれる契約結ぶ計画を立て、十分な用意をもって老後に備えていた。月日が経ち、一方の認知症が進んだことで、もう一方の女性が自ら後見人になるという手続きを裁判所に申し出たが、ここからトラブルが始まった。認知症になった女性の親族が「あんな一緒に住んでいる人が後見人になるなんておかしい。私たち親族が後見人になるべきだ。(本人は)施設に入れた方がいい」と異を唱えたからだ。
成年後見制度では、裁判所が調査員を派遣して本人の状態を確認することになっている。しかし、このケースで裁判所は、親族同士の意見が異なる状況を理由に、第三者の弁護士を後見人につけたという。地元・大阪の弁護士会から後見人となる弁護士が決まったが、「年寄りなのだから車はいらない」と、自動車を売って処分してしまった。さらに2人が親族関係ではないという理由から「金をきっちり分けないといけない」と、認知症が出た女性を施設に入所させ、結果的に2人は離れ離れに。そして、施設での面会を申し出ても、後見人がこれを許可せず会えなくなってしまった。
■弁護士「書類だけでなんとなく後見人が決まる。ガチャみたい」多くの問題が混在する今回のケース。老カップルは、認知症が出る前に十分な準備を進めていたにも関わらず、同居していない親族の立てた後見人によって、関係が引き裂かれてしまった。南氏は「裁判所には、本人にとって一番いいのは誰か、ということを考えて後見人を選んでほしいが、運用が追いついていない。例えば認知症が進んでいて判断能力がだいぶ減退していたとしても、裁判所の調査官が本人と面談をして、様子を確認しようとなっている。それがどんどん、親族の話だけを聞いて裁判所が決めるというような運用になり、特にコロナ禍で拍車がかかった。書類だけでなんとなく後見人が決まってしまう。裁判所も正直、暇がないみたいな感じになってきている。後見人ガチャみたいな問題も起こりがちだ」と、現状の問題点を指摘した。
また、「後見人が出てくる前の生活が、おそらく本人が望んで暮らしていたスタイル。もし同居の家族が介護疲れなど、うまく介護ができなくなったとしたら、例えばショートステイを使うなど本人にとって一番いい、介護疲れしないようにサポートするのも後見人の仕事」と述べていた。
(『ABEMA Prime』より)
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