世界遺産で有名なアフガニスタン中部バーミヤンで2024年5月、過激派組織「イスラム国」(IS)が外国人を標的に銃撃しスペイン人ら6人が死亡した。イスラム主義組織タリバン復権後、治安が安定した観光地に客足が戻り始めたところでのテロ。「仕事がなくなる」。再興への道は遠く関係者への打撃は大きい。(カブール共同)
バーミヤンには山岳地帯に仏教遺跡群があり、6世紀ごろの建立とされる世界最大級の東大仏(高さ約38メートル)と西大仏(同55メートル)は、タリバンが旧政権時代の2001年に爆破した。2003年、世界遺産登録と同時に存続が危ぶまれる「危機遺産」に指定された。
地元観光業者は、タリバンが2021年8月に首都カブールを制圧し、暫定政権を樹立後しばらくは外国人観光客の姿が消えたが、1年を過ぎた頃から見られるようになったと話す。当局によると、アフガンへの外国人観光客は2021年の691人から2022年に約2300人、2023年には約7千人に増えた。
タリバンが米軍や旧国軍と戦闘を繰り広げていた時は、玄関口のカブールからバーミヤンまでの道中で襲撃の危険があった。タリバン復権によって戦闘は終わり、治安が改善したとの情報が広まったことが観光客増加につながったとみられる。
事件は2024年5月17日に起き、スペイン人3人とアフガン人3人が死亡した。負傷した7人のうち4人もスペイン人ら外国人だった。ISは5月19日、外国人を狙ったとする犯行声明を発表。タリバン復権後は2022年12月にカブールで中国系ホテルが襲撃され中国人数人が負傷したISのテロはあったが、外国人観光客が死亡するのは異例だ。
バーミヤンのホテルで働く男性(35)は「ここで生まれ育ったが、外国人が標的になったテロは聞いたことがない。怖い」と語る。幼い子がおり「お客さんが来なくなり仕事がなくなったらどうしよう」と不安がる。
ISはタリバンと敵対。イスラム教スンニ派のISは、バーミヤンにも多く住むシーア派ハザラ人らを狙ったテロを重ねている。今回の事件については、政府機関が多く警備も厳重なカブールよりも、犯行が容易な地方の観光地をISが選んだとの見方が出ている。
治安当局は7人を逮捕したが、タリバンの治安維持能力に疑問の声も。見慣れない人がいると通報が行くような小さな観光地で容疑者が事前に浮上しなかったからだ。タリバン復権後に母体のパシュトゥン人が地元当局に送り込まれ、住民が声を上げにくくなっているとの指摘もある。
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