葬儀や終活サービスをめぐる消費者トラブルが相次いでいる。埼玉県消費生活支援センターによると、関連の相談は2021~23年度の3年間で500件を超えた。消費者団体のアンケートからは、サービスの選び方を含めた終活そのものへの悩みが浮かび上がる。

 「葬儀一式○円という広告を見て依頼したが、実際にはそれ以外の費用がかかり高額になった」「終活で不用品を整理しようとして買い取り業者に依頼したが、信用できる業者か分からない」――。

 県消費生活支援センターには、終活や葬儀に関する相談が毎年100件以上(21年度163件、22年度191件、23年度151件)寄せられている。21年には、広告で「追加料金一切不要のお葬式」などとうたっていた全国展開する葬儀サービス業者が、実際には表示された以外の追加料金が必要だったとして、消費者庁から景品表示法違反で課徴金納付命令を受ける事案もあった。

 こうした状況を受け、NPO法人「埼玉消費者被害をなくす会」は昨年10~12月、会員らに終活に関するアンケートをした。今月発表された1282人分のアンケート結果によると、葬儀に関してトラブルになった経験がある人は12人(1%)だった一方、「葬儀を出した際、思ったより高額請求だった」と答えた人は119人(9%)いた。また、「永代供養にしたいと申し出たらできないと言われた」というトラブルもあった。

 一般的には飲食接待費や寺院へのお布施といった費用は含まれないことが多い「葬儀一式」についての認識も聞いたところ、「何をさすのかよく分からない」「葬儀に関わる全ての費用」と回答した人も462人(36%)いた。

 「葬儀社が行政の許認可や登録・届け出が必要な業態ではない」と正しく認識していた人は77人(6%)だった。

 終活全般への悩みも多かった。終活を始めている人は80代でも35.3%にとどまり、自由回答では「何から手をつけてよいか皆目わからない」「意外と知らない、考えていないことに気づいた」といった記述も目立った。

 スマートフォンやパソコンに残る情報を生前に整理し、家族らに必要な情報を引き継いでおく「デジタル終活」についても調査した。「デジタル終活」という言葉を聞いたことがないという人が673人(52%)にのぼり、パソコンやスマホのIDやパスワードを家族に伝えるなどしていた人は195人(15%)だった。

 同会は「情報漏洩(ろうえい)を心配する声もあるが、パスワードを連想させるヒントだけを記載しておくなどの方法もある」「葬儀社は業界団体に所属しているかを気にかけたり、事前に複数の葬儀社を訪問したりすることも大切」などと対策を呼びかけている。(小林未来)

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