JR仙台駅から北へ約6キロ、仙台市青葉区の都市部近郊にある宮城学院女子大構内の森にはサンショウウオが生息する。2020年に見つかった個体がこのほど新種と判明した。発見した藤原愛弓さん(農学博士)は「身近な自然にも貴重な生き物がいる。今回の発見が環境を考えるきっかけになってほしい」と話す。(共同通信=住友亮介)
藤原さんによると、同大助教だった2020年2月、構内の生態系を調査中に、森の中の水辺でサンショウウオ3匹と卵を見つけた。当初は東北地方から新潟、関東北部にかけて分布し、絶滅が危惧されている日本固有種の「トウホクサンショウウオ」だと考えた。都市部で繁殖は珍しく、論文にまとめて公表した。
するとこの論文を読んだ高知大の研究者から「もしかしたら新種かもしれない」と連絡があり、共に歯並びやDNAなどを調べた結果、トウホクサンショウウオとは独立した新種だと分かった。主な生息地の仙台市と山形市にちなんで「センザンサンショウウオ」と名付け、2023年に海外の学術誌で発表した。
宮城学院女子大キャンパスの一部や隣接する公園一帯は、森林や沼地が残っており、宮城県指定の緑地環境保全地域。道路や住宅に囲まれながら、生き物の貴重な生息地になっており、公園では以前からサンショウウオの保全活動が行われていた。今回の発見は種の詳細な分類や、生態解明につながったという。
藤原さんは元々ミツバチの研究者で、現在は「日本在来種みつばちの会」(岩手県)の理事として養蜂産業の振興に携わる。「昔から生き物が好きだったが、まさかサンショウウオの新種発見に関わるとは」と驚く。
調査をサポートした同大の田中一裕教授(農学)は「誰よりも現場の自然を歩いた藤原さんだから発見できた」とたたえた。同大では今回の発見を生かし、生息域保全を進める方針だ。
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