マッチングアプリで知り合った女性から…
マッチングアプリを悪用 マルチ商法で違法勧誘か 4人逮捕
セミナーでは豪華な暮らしぶりを披露
「アポ取り大会」も 勧誘の手口は
弁護士「マッチングアプリで知り合った異性から勧誘 多い」
学生「女性からサークルのような集まりの写真を見せられてどう思うかと聞かれた。『楽しそうだ』と答えたら、一度、詳しい話を聞いてみないかと誘われた」
交友関係を広げたいと考えていた学生は、誘いに乗り、およそ2週間後に別の喫茶店で女性から同じスクールに通っているという男女2人を紹介されました。このうち男性は「これからは副業で稼がないといけない。投資の手法を学べば、誰でも稼げるようになる。月に1000万円を稼いでいる人もいる」などと説明してきたといいます。そのうえで「会員を新たに勧誘すると10万円の報酬を得られる」と伝えられました。示された入会金は42万9000円で、「これでも安い方だ」とか、「いまの生活を変えたくないか」などと入会を迫られたといいます。男性が必要な資金が用意できないと伝えると、「消費者金融から借りればいい」などと促され、断り切れず、その日のうちに借金の申し込みをさせられたということです。
この日の勧誘は、場所を変えながらおよそ8時間に及んだということです。男性は入会後、知り合いやかつての同級生を勧誘するよう強いられることに耐えられず、通うのをやめたということです。
学生「人を信用できなくなってしまったし、女性が怖いと感じるようになってしまった。このような勧誘はやめてほしいし、二度とやらないでほしい」
大学生などの若者を喫茶店に誘い出し、いわゆるマルチ商法の手法でビジネススクールへの入会を違法に勧誘させたとして、運営グループの幹部4人が逮捕されました。警視庁はマッチングアプリを悪用しておよそ2000人を勧誘し、入会金などとして8億円を集めていたとみて調べています。逮捕されたのは、ビジネススクール「ワンハンドレッド」の運営グループの幹部、坂本新容疑者(30)や大森航斗容疑者(26)ら4人です。警視庁によりますと、坂本容疑者らは、去年3月、運営していたビジネススクールが違法なマルチ商法をしていたとして東京都から業務停止命令を受けましたが、その後もスクールの名称を変えるなどしてグループのメンバーに勧誘させていたとして特定商取引法違反の疑いが持たれています。このグループは、マッチングアプリを悪用して大学生などの若者を喫茶店に誘い出し、「若いうちから高級マンションに住む成功者の話を聞いてみないか。人脈も広がるので絶対に入ったほうがよい」などと投資や資産形成の手法を学ぶビジネススクールへの入会を勧めていたということです。入会金は50万円ほどかかりますが、新たに会員を入会させれば、1人当たり10万円の報酬を受け取れるとしてマルチ商法の手法で次々と友人などを勧誘させていたということです。消費生活センターなどには、強引な勧誘を受けたとか、スクールの内容が説明と違ったといった相談が相次いでいたということです。警視庁は、大学生などの若者およそ2000人を勧誘し、8億5000万円を集めていたとみて調べています。4人の認否は明らかにしていません。
NHKは、容疑者らが以前運営し、違法なマルチ商法をしていたとして業務停止命令を受けたビジネススクールのセミナーの映像を入手しました。2022年に開かれたセミナーでは、坂本容疑者が冒頭、集まった会員たちを前に、最近訪れたという高級レストランを紹介し、豪華な暮らしぶりを披露するところから始まります。その後、これからの日本経済の話にうつり、「今後、少子高齢化が進み、ビジネスの競争が激化していく中で、日本人全員が豊かになるのは100パーセント無理で、競争に勝って上位数パーセントの勝ち組になるしかない」などと説明していました。その上で、「ネットワークビジネスや営業の手法を身に付けて結果を出す必要がある」と話して、マルチ商法の手法を学ぶよう促していました。また、2021年に開かれたセミナーの映像では、「営業で結果を出す方法」について語っています。このなかでは、「人がものを買うときや情報を判断する時には見た目が大きく影響する」として、「身だしなみを整えたりアポイントを取る場所にこだわったりして武装すべきだ」などと説明していました。
警視庁によりますと、逮捕された幹部らは、メンバーに新しい会員を勧誘させる際に、まずは友人を誘うことを勧めたうえで、それが行き詰まるとマッチングアプリを使うよう指示していたということです。
グループが行っていた勧誘の手法です。マッチングアプリで相手を見つけると、1か月ほどやりとりを続け、2回目か3回目のデートで喫茶店に誘い出します。店には幹部の会員を同席させ、「成功しているすごい人」と褒めちぎり、「この人のようにビジネスで成功しよう」などと言って入会を迫ります。入会金をすぐに用意できないという人には消費者金融から借りるよう勧め、ちゅうちょする様子があったら幹部は数分間席を外して二人きりになります。その間に「入らないならそれでもいい」と突き放してみたり、「1日1杯コーヒーを我慢すれば返せる額だ」と説得を繰り返したりしてその場で入会を決めさせていました。
グループでは喫茶店で勧誘することを「アポ」と呼び、メンバーどうしで契約数を競い合う「アポ取り大会」を開いて勧誘をあおることもあったということです。これらの手法は、ビジネススクールのセミナーや対面での指導でメンバーに指南していたということです。
東京都消費生活総合センターによりますと、悪質なマルチ商法の勧誘を受けたなどという相談は、去年1年間に632件寄せられていて、ほとんどが20代から30代の若い世代だということです。
若者の悪質マルチ被害に詳しい丹野駿吾弁護士によりますと、従来は化粧品などの消耗品を売りつけられたという相談が多かったものの、ここ数年で増えているのが、投資などの儲け話やビジネススクールの入会をめぐるトラブルです。マッチングアプリで知り合った異性から勧誘されたケースが多く、恋愛関係を匂わせられ、嫌われたくないという思いから話に応じてしまうということです。勧誘の際には、仲間がSNSで発信しているきらびやかな生活の様子を見せられ、「労働環境や賃金が今後悪化していくなかで、投資で不労所得を作ろう」と言われるものの、実際に指南された投資の手法などで利益を得られることはまずないのが実態だということです。新たな会員を勧誘するしか利益を得られないため、友人を勧誘するよう促されるということです。
丹野駿吾弁護士「『みんなやっているから』と言われ、『友達を売る』ことに抵抗を感じなくなっていく。洗脳に近い状態になるケースも少なくない」
また、入会金などの返金を求めてもすぐには応じてもらえないことが多く、恋愛関係を匂わされて被害に遭った恥ずかしさなどから消費生活センターや弁護士に相談する人は限られているということで、丹野弁護士は、被害が潜在化し、実態がつかみにくくなっていると指摘します。
丹野駿吾弁護士「被害金額は50万円程度のことが多く、大学生が社会人になれば返せない額ではないが、友人から悪質な勧誘をされたり、みずからが勧誘したりすることで人間関係を壊してしまったという『心の2次被害』も深刻だ。悩んだときには消費生活センターや弁護士に相談してほしい」
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