福岡県警が県内の全36警察署に対し、集中豪雨などに備えて複数の代替施設を確保するよう指示していたことがわかった。県内では、昨年までの7年間で気象庁による大雨特別警報が6回発表されるなど、たびたび記録的な大雨に見舞われるが、複数の代替施設を確保した署は一部にとどまる。浸水被害に遭う署もあるなか、車両や人員、通信機器を移転させることで警察機能を維持する方針だ。
ブリヂストン、「創業の地」で協力
県警警備課によると、大雨による災害が相次ぐ出水期を前にした5月中旬、全署に指示した。パトカーや捜査車両を移動できたり、無線などの資機材を運びこんだりできる代替施設を複数確保し、災害時にも避難誘導や救助などの警察機能を維持できるよう求めた。同時に被災しない距離にある行政機関や大学、企業などを想定し、住民の避難場所は避けるよう求めているという。
気象庁による大雨特別警報は「数十年に一度」「これまでに経験したことのないような」レベルの大雨の際に発表される。だが福岡県内では、九州北部豪雨のあった2017年以降に7年で計6回と全国最多に上る。発達した雨雲が帯状に連なる線状降水帯が発生し、短時間で記録的な大雨に見舞われてきた。
県警は東日本大震災以降、代替施設を探してきたが、1カ所でも確保できたのは36署のうち20署、複数確保した署は11署にとどまる。広さやセキュリティーといった条件を満たす施設を確保するのは容易ではない。
久留米署は今年2月、久留米市が創業の地であるタイヤ大手のブリヂストンや市と協定を結んだ。近年の大雨で、署の駐車場や周囲の道路がたびたび冠水し、パトカーが動けなくなるなどの影響が出ていた。そのため記録的な大雨が予想されるなどの場合、同社や市役所の施設を借り、パトカーや捜査車両、無線機能を移して警察業務が継続できるようにした。
6月には初めての訓練を実施し、署員らがパトカーを同社へ移動させたり、車庫や庁舎に止水板を設置したりした。西村善和署長は「何か事が起きてから動き出すのでは遅い。雨にも負けず、署の老朽化にも負けず、市民の安心安全を守っていきたい」と話す。(小川裕介)
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