生活の中で利用することも多い、踏切。鉄道車両と自動車、そして歩行者の事故を防止するために設置されているが、その中でも危険度が高いと言われているのが「第4種踏切」だ。遮断機・警報機付きの第1種に対して、第4種は遮断機も警報機もない。全国に約2400カ所あり、事故発生率は第1種の2倍弱にのぼる。
【映像】事故率・約2倍の「第4種踏切」実際の様子
直近では今年4月、群馬県高崎市内の第4種踏切で、9歳女児の死亡事故が起きた。これを受けて高崎市は、市内21カ所の第4種踏切の廃止を決めた。2021年には総務省が、全国の第4種踏切解消に取り組むよう、国土交通省に勧告している。しかし住民の反対もあり、思うように進んでいない。鉄道の安全をめぐっては、正式な踏切ではない線路上を、周辺住民が横断する「勝手踏切」も問題視されている。『ABEMA Prime』では、踏切の現状を考えた。
■警報機も遮断機もない「第4種踏切」をなくせない理由高崎市内での事故を受けて、群馬県では知事判断で、第4種踏切の全面廃止を決めた。群馬県は2029年度末にかけて、第4種踏切を可能な限り廃止、または第1種踏切に転換すると発表。県内の第4種踏切74カ所(4月1日現在)については、高崎市の4か所が第1種踏切に転換、富岡市では7月1日時点で3カ所を廃止するなどの方針が発表されている。
しかしながら、高崎の事故現場の場合、そのまま廃止されてしまうと、遠回りを余儀なくされる現状がある。現場と、その付近の第4種踏切を利用せず、最寄りの第1種踏切を通るルートを進もうとすると、その距離は約5倍にもなってしまう。
交通政策・交通経済を専門とする桜美林大学の戸崎肇教授は、群馬県の決定を「大胆」と評する。「優先順位を付けるのは大事だが、誰が金銭を負担するのか。鉄道会社がやれば、つぶれてしまう。地元の生活があって、そこに線路が敷かれる以上、横断需要は絶対にある。利便性を考えないと、“勝手踏切”に走ってしまう」と、踏切ではない場所を勝手に渡る違法行為につながるという。第4種踏切を第1種に転換する場合には、環境などにより異なるが、1500万円〜3000万円ほどかかる。国からの補助制度もあり、改良すべき踏切道を改良する鉄道事業者(赤字または営業利益率7%以下)に対し、改良費用の1/2(黒字事業者は1/3)が補助される。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「問題は設置費用よりも、維持コストにある」と指摘する。「電車が1時間に2本だとしても、遮断機や警報機を月1回メンテナンスすれば、年間で何百万円もかかる。とはいえ、維持費用不足で踏切を廃止すると、より危険な“勝手踏切”が生まれる。自治体が第1種に変えるか、第4種のままリスクを負うかを考えるべきではないか」と見解を述べた。
経済学者の竹中平蔵氏は、「学校でしっかり教育し、自分たちでリスク管理をするのが基本だ」としながら、第4種から第1種への切り替えについて、「私は安いと思う」と語る。「1カ所1300〜1500万円で2400カ所なら、全部替えても300〜400億円。先日始まった定額減税は5兆円も使っている。ふるさと納税も1兆円近くあり、『優先的に第4種をなくすために寄付して』と呼びかける首長が出ても不思議でない。維持費用の問題はあるが、イニシャルコストはかなり小さい」と、一新も許容範囲だとした。この指摘に戸崎氏は「首長が交通行政に熱心な自治体は非常に少ない」と答える。「遮断機がなくても、ほんの少しの障害物を作っただけで事故が減ったという研究結果もある。便数が少ないなら、その時間帯に人が立つだけでも違う。お金をかけずにやる方法はある」と、コストをかけない施策についても紹介した。
■踏切のない場所を無断で渡る危険行為「勝手踏切」いわゆる“勝手踏切”とは、鉄道事業者が踏切道として認めていないが、住民が日常的に線路を横断する場所の通称を指し、全国で約1万7000カ所存在している。“踏切”という名前で呼ばれてはいるものの、無断で線路に立ち入る行為で違法だ。
リスクに対する対処が、時に「行きすぎている」と言われるケースもあるが、どこまでが妥当で、どこからが過剰なのか。公園の遊具で児童がけがをする事故を受けての「遊具の撤去」や、ホームからの転落事故での「ホームドア設置」、通学路での交通事故による「歩道の整備や信号機設置」などが例となる。
ひろゆき氏は「日本の過保護感がすごい」と反応する。「他国を見ていると、川でも崖でも、柵のない場所には『落ちたら死ぬよ』と書いてある。むしろ日本が特殊だということを、日本人が知らない」と他国との比較を伝えると、これに竹中氏が賛同。「アメリカでは『自己責任でどうぞ(PROCEED AT YOUR OWN RISK)』と書いてある。日本は安全志向が強すぎる。東北のお祭りで1人死者が出たから中止したが、リオのカーニバルでは毎年何十人も亡くなっている。『非日常だから甘受しよう』というリスクに対する考え方が必要だ」と同調した。
「何かあったときにどうしよう」と考える国民性について、戸崎氏は「何重もフェールセーフすることで、人々が自分で考えなくなり、責任を取らずに行政任せにしてしまう」とし、「生活のためのものだから、地域住民が自ら考えないと解決しない。地域によって事情が異なり、画一的にやるのには無理がある」と、住民による自衛も必要だとした。
ひろゆき氏は「守り方には2種類ある」と説く。「壁を作って通れなくする方法と、警報機などで大音量を鳴らす方法。フェンスを作らなくても、コストを安くすることはできる。ソーラー駆動で『一定の速度で動く物が、何メートル先に見えたら警報音を鳴らす』という機器を置き、壊れたら買い直すようにすればいいのではないか」と、低コストでの事故防止策についても提案していた。
(『ABEMA Prime』より)
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