岩手県軽米町の松橋商店に設けられた専門コーナーの前で、ポーズをとる「ハイキュー!!」ファンの女性たち(4月)=共同

岩手県北部、人口約8千人の軽米町が、人気バレーボール漫画「ハイキュー!!」ファンの聖地巡礼熱で沸いている。岩手県は、原作者の古舘春一さんの出身地。軽米町とよく似た景色が作品の随所に登場し、口コミで話題になった。町にはポスターやのぼりが立ち、歓迎ムード一色。一方、作品の舞台として登場する仙台市でもイベントが企画されるなど、ブームは広がりを見せている。

「宮城県立烏野高校排球部」の部員らの成長と活躍を描いた物語。漫画は2012〜20年に週刊少年ジャンプで連載され、単行本全45巻の発行部数は6千万部を超える。14年からテレビアニメが放映開始。今年2月に公開された映画は、興行収入100億円超えの大ヒットとなった。

原作者の出身市町村は公表されていないが、作品中の描写が「軽米町の景色とそっくり」とファンの間でうわさが広まり、来訪者が増えた。町は「巡礼マップ」を作り、主人公の日向翔陽と影山飛雄が出会った体育館や烏野高校と似た建物など14スポットを紹介。日本語と英語で写真撮影の注意点も添える。

住民も心を込めてもてなす。町内の大清水旅館では「ふにゃふにゃになったフライドポテト」「ポークカレーの温玉のせ」など、作中人物が好きなメニューを再現して提供するプランが人気だ。

旅館を営む大清水浩幸さんによると、最近の客は約8割が台湾や中国から訪れるファン。「可能な限り好物メニューを再現したい」と意気込む。

町唯一の書店、松橋商店も専門コーナーを設け、歓迎に一役買う。店主の松橋道子さんは、家族から教えてもらった英語で「どこから来たの?」と積極的に訪日客らとコミュニケーションを取る。「人口が減る中、町に活気が生まれるのはうれしい」

コスプレ姿で記念撮影を楽しむファンの姿があちこちで見られ、町はゆるやかな聖地感に包まれる。台湾出身で東京在住の郭育文さんは3回目の来訪。「軽米の人は声をかけてくれて優しい。また来たくなる」と笑顔で話した。

一方、仙台市も「聖地化」に乗り出している。昨年、日向と影山の主人公2人を仙台観光特使に任命。試合会場のモデルとなったカメイアリーナ仙台(太白区)では見学ツアーが始まった。今年8月には、テレビアニメ放送10周年を記念した企画展が、同アリーナで開かれる予定だ。

「世界的に人気の作品で、観光のキラーコンテンツだ。誘客につながる企画で盛り上げたい」と市の担当者。勢いは当分止まりそうにない。

〔共同〕

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